カフェ・ブレイク
「わかったよ!」
やいやいうるさい親に、俺は宣言した。
「ダメ元でプロポーズしてみるけど。断られたら、あきらめてくれよ。俺を責めるなよ。……それから!もしOKもらっても、なっちゃんに、仕事辞めろとか、同居しろとか、会話を盗聴させろとか言うなよ。」
父はキョトンとしていたが、母はなっちゃんから聞いていたのだろう。
至極まじめにうなずいてから、俺の背中をバンバン叩いた。
年が明けた。
なっちゃんは夜には帰ってくるらしい。
俺は多少緊張しながら店に立った。
どう言おうか、いろんな言葉を頭の中で繰り返していた。
「マスター。あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。」
昼下がりに、頼之くんがそう言いながら店に来た。
ジャージにベンチコートってことは、元旦早々練習なのか。
「おめでとうございます。昨年中はありがとうございました。今年もよろしくお願いいたします。」
そう言って、準備しといたお年玉を渡した。
俺からと、小門から預かった分と。
予想してなかったらしく、頼之くんはぶんぶん手を振って拒絶したけれど、強引に押し付けた。
「気持ちだから受け取ってください。あいつも俺も、頼之くんにもらってほしいんですよ。」
頼之くんは照れくさそうな顔で、小さく「ありがとう」と言った。
「今日も練習ですか?」
そう聞きながらコーヒー豆を挽く。
「うん。U-13選手権があるから。とりあえず決起集会?午前中練習して、ぜんざい喰って解散になった。」
13歳以下ってことは、中学1年生だけ?
「勝てるといいですね。」
頼之くんは苦笑した。
「団体戦って難しいわ。個人戦ならナンボでも勝てる気がするけど。」
「そうでしょうね。でも、思い通りにならないのも、おもしろいもんですよ。」
何気なくそう言ったのだが、頼之くんはニヤリと笑った。
「人生も?思い通りにならないことばっかりでも、おもしろい?」
「いや。残念ながら、思い通りにならないことばっかりだけど、私はそこまで達観できてません。」
ついため息まじりにそう言ってしまった。
「ふぅん?ま、達観する必要はないんじゃない?鳴かせてみせようホトトギス。」
頼之くんは、やっぱり強いな。
「頼之くんに愛される女性は幸せですねえ。」
俺のぼやきに、頼之くんは驚いたようだ。
「なに?急に。……思い通りにいかないことって、そっちの話?」
「そうですよ。レハールのメリー・ウィドウの『女女女のマーチ』を聞いたことはありますか?男はみんな激しく同意すると思いますよ。」
やいやいうるさい親に、俺は宣言した。
「ダメ元でプロポーズしてみるけど。断られたら、あきらめてくれよ。俺を責めるなよ。……それから!もしOKもらっても、なっちゃんに、仕事辞めろとか、同居しろとか、会話を盗聴させろとか言うなよ。」
父はキョトンとしていたが、母はなっちゃんから聞いていたのだろう。
至極まじめにうなずいてから、俺の背中をバンバン叩いた。
年が明けた。
なっちゃんは夜には帰ってくるらしい。
俺は多少緊張しながら店に立った。
どう言おうか、いろんな言葉を頭の中で繰り返していた。
「マスター。あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。」
昼下がりに、頼之くんがそう言いながら店に来た。
ジャージにベンチコートってことは、元旦早々練習なのか。
「おめでとうございます。昨年中はありがとうございました。今年もよろしくお願いいたします。」
そう言って、準備しといたお年玉を渡した。
俺からと、小門から預かった分と。
予想してなかったらしく、頼之くんはぶんぶん手を振って拒絶したけれど、強引に押し付けた。
「気持ちだから受け取ってください。あいつも俺も、頼之くんにもらってほしいんですよ。」
頼之くんは照れくさそうな顔で、小さく「ありがとう」と言った。
「今日も練習ですか?」
そう聞きながらコーヒー豆を挽く。
「うん。U-13選手権があるから。とりあえず決起集会?午前中練習して、ぜんざい喰って解散になった。」
13歳以下ってことは、中学1年生だけ?
「勝てるといいですね。」
頼之くんは苦笑した。
「団体戦って難しいわ。個人戦ならナンボでも勝てる気がするけど。」
「そうでしょうね。でも、思い通りにならないのも、おもしろいもんですよ。」
何気なくそう言ったのだが、頼之くんはニヤリと笑った。
「人生も?思い通りにならないことばっかりでも、おもしろい?」
「いや。残念ながら、思い通りにならないことばっかりだけど、私はそこまで達観できてません。」
ついため息まじりにそう言ってしまった。
「ふぅん?ま、達観する必要はないんじゃない?鳴かせてみせようホトトギス。」
頼之くんは、やっぱり強いな。
「頼之くんに愛される女性は幸せですねえ。」
俺のぼやきに、頼之くんは驚いたようだ。
「なに?急に。……思い通りにいかないことって、そっちの話?」
「そうですよ。レハールのメリー・ウィドウの『女女女のマーチ』を聞いたことはありますか?男はみんな激しく同意すると思いますよ。」