カフェ・ブレイク
「本当はちゃんとご自宅までお送りしたいのですが、すみません、今日は自宅に客を招いてますんで、私はこれで失礼いたします。」
要人さんはそう言って、頭を下げた。
「怪我をさせてしまったお詫びは、改めてさせてください。」
「え!?」
……いやいやいや。
要人さんが悪いんじゃないし。
「あの、私が勝手に怪我したんですし、どうかもうお気遣いなく。連れて来ていただいて、ありがとうございました。お会計してから帰りますので、どうぞお先に行ってください。」
深々とお辞儀をして謝意を伝えた。
「いや。驚かせて怪我をさせてしまったのは私ですから。完治されるまで、少しだけサポートさせてください。……彼は、私の秘書の原です。彼がご自宅までお送りいたしますので。」
秘書さんが控えめに頭を下げてらっしゃるのに会釈を返してから、一応抵抗した……無駄だろうなと想いながら。
「どうか、ほんっとうにお気遣いっなく。わざわざ秘書さんのお手を煩わせないでください。」
要人さんは、柔らかい声で言った。
「ええ。本当は私が夏子さんとご一緒したいんですけどね。こんな役得を秘書に譲るのは非常に惜しいのですが……また、お会いしましょう。では、これで。くれぐれも、お大事にしてください。」
綺麗なお辞儀と、爽やかなのに深みのあるシトラスの香りを残して、要人さんは病院を出て行った。
玄関先に停まっていた黒い車の後部座席に乗り込んで、再び会釈。
終始優しいのに、なんか、振り回されて疲れちゃったかも。
ため息をついた私に、秘書の原さんが声をかけた。
「では、我々も参りましょうか。」
「あ、お会計がまだ……」
原さんは、ニコリともせず言った。
「もう社長が済ませられました。……支払いをしなければ薬を受け取ることはできません。」
え!?
「そんな……。」
初診だからけっこう高いのに……。
困ってる私を先導して、原さんは病院の玄関へと移動した。
やっぱり運転手さん付きの車の後部座席のドアを開けていただき、従容と乗り込んだ。
車中は、誰も口を開かず、すごく気詰まりだった。
マンションまで車で5分かからないのに、とても長く感じた。
ようやく到着し、車を降りると、ホッとしてため息が出た。
「取り急ぎお持ちいたしました。明日何か召し上がりたいものがおありでしたら、ご連絡ください。」
そう言いながら、原さんが有名料亭の紙袋とご自分の名刺をくださった。
「……お世話をおかけして、申し訳ありませんでした。」
心からそう謝った。
要人さんはそう言って、頭を下げた。
「怪我をさせてしまったお詫びは、改めてさせてください。」
「え!?」
……いやいやいや。
要人さんが悪いんじゃないし。
「あの、私が勝手に怪我したんですし、どうかもうお気遣いなく。連れて来ていただいて、ありがとうございました。お会計してから帰りますので、どうぞお先に行ってください。」
深々とお辞儀をして謝意を伝えた。
「いや。驚かせて怪我をさせてしまったのは私ですから。完治されるまで、少しだけサポートさせてください。……彼は、私の秘書の原です。彼がご自宅までお送りいたしますので。」
秘書さんが控えめに頭を下げてらっしゃるのに会釈を返してから、一応抵抗した……無駄だろうなと想いながら。
「どうか、ほんっとうにお気遣いっなく。わざわざ秘書さんのお手を煩わせないでください。」
要人さんは、柔らかい声で言った。
「ええ。本当は私が夏子さんとご一緒したいんですけどね。こんな役得を秘書に譲るのは非常に惜しいのですが……また、お会いしましょう。では、これで。くれぐれも、お大事にしてください。」
綺麗なお辞儀と、爽やかなのに深みのあるシトラスの香りを残して、要人さんは病院を出て行った。
玄関先に停まっていた黒い車の後部座席に乗り込んで、再び会釈。
終始優しいのに、なんか、振り回されて疲れちゃったかも。
ため息をついた私に、秘書の原さんが声をかけた。
「では、我々も参りましょうか。」
「あ、お会計がまだ……」
原さんは、ニコリともせず言った。
「もう社長が済ませられました。……支払いをしなければ薬を受け取ることはできません。」
え!?
「そんな……。」
初診だからけっこう高いのに……。
困ってる私を先導して、原さんは病院の玄関へと移動した。
やっぱり運転手さん付きの車の後部座席のドアを開けていただき、従容と乗り込んだ。
車中は、誰も口を開かず、すごく気詰まりだった。
マンションまで車で5分かからないのに、とても長く感じた。
ようやく到着し、車を降りると、ホッとしてため息が出た。
「取り急ぎお持ちいたしました。明日何か召し上がりたいものがおありでしたら、ご連絡ください。」
そう言いながら、原さんが有名料亭の紙袋とご自分の名刺をくださった。
「……お世話をおかけして、申し訳ありませんでした。」
心からそう謝った。