カフェ・ブレイク
「ちょっと。こっちには来ないでよ。プライベートゾーンよ。」
入口からも窓からも見えないようにしてあるので、密室ではないけれど緊張してしまう。
でも義人くんからは邪心は感じなかった。
必死な顔で近づいてきて、私の両腕をつかんだ。
「あいつには、マジで近づいたらあかん。まともな倫理観なんかないねんから。火遊びで済めばいいけど、へたに気に入られたら一生飼い殺しにされるで。」
……すごいこと言ってるけど、義人くんの表情も口調も本気だった。
冗談でも嘘でもないらしい。
「……普通に親切な紳士って感じだったけど。それより、お父様のことを『あいつ』なんて呼ぶのはダメよ。」
多少強引だけど、という言葉は飲み込んで、義人くんをたしなめた。
義人くんは、頬を引きつらせた。
「まさかもう……」
「ちょっと!何、馬鹿なこと言ってるの!?ないないない!!!ただ、義人くんに似てたから見とれ……て……」
しまった。
余計なことまで言ってしまった。
どうしよう。
ものすごく不自然に言葉を切ってしまったことが、ますます信憑性を高めてしまう。
気まずい想いで口をつぐむ。
義人くんは、ちょっと驚いたようだったけど、私とは逆にうれしそうに頬を緩めた。
「……そうなんや。」
私はただ黙って首をぶるぶると横に振った。
でも義人くんは、臆せずふわりと私を抱きしめた。
中学2年生でも私よりは背が高いのよね……。
それにしても、薄いな。
腕や首の細さと胸板の薄さを改めて感じた。
……でも、私をお姫様抱っこできる腕力はあるんだもんなあ……男の子って、すごい。
意識すると、ますます自分胸の鼓動が大きくなった気がした。
「……違うの。」
力なくそう否定する。
「今さら、遅い。俺はその気になった。」
耳元でそう囁かれて、ドキッとした。
その気って……いや、それはまずい!
慌てて私は義人くんからもがき離れた。
少し弾んだ息を整えてから、ちょっと睨んで見せた。
「君だって、他に相手はいっぱいいるんでしょ。私はそういう遊びには付き合えないから。」
義人くんは、ハッとしたようだが、すぐに否定した。
「夏子さん、たぶん誤解してるわ。」
「誤解?女子大生の寮に入り浸ってるのに?朝帰りもしょっちゅうしてたじゃないの。」
こんなこと言いたくなかったのに……言っちゃった。
生徒の1人でしかない男子の女性関係に口出しする必要ないのに。
……何だか、自分がものすごく嫉妬深い女みたいで嫌になる。
義人くんは、頭を掻いた。
「やっぱり誤解。ちゃんと説明するから!夕方行く。鍵開けてや!」
時計を見て、義人くんは渋々保健室から出て行った。
入口からも窓からも見えないようにしてあるので、密室ではないけれど緊張してしまう。
でも義人くんからは邪心は感じなかった。
必死な顔で近づいてきて、私の両腕をつかんだ。
「あいつには、マジで近づいたらあかん。まともな倫理観なんかないねんから。火遊びで済めばいいけど、へたに気に入られたら一生飼い殺しにされるで。」
……すごいこと言ってるけど、義人くんの表情も口調も本気だった。
冗談でも嘘でもないらしい。
「……普通に親切な紳士って感じだったけど。それより、お父様のことを『あいつ』なんて呼ぶのはダメよ。」
多少強引だけど、という言葉は飲み込んで、義人くんをたしなめた。
義人くんは、頬を引きつらせた。
「まさかもう……」
「ちょっと!何、馬鹿なこと言ってるの!?ないないない!!!ただ、義人くんに似てたから見とれ……て……」
しまった。
余計なことまで言ってしまった。
どうしよう。
ものすごく不自然に言葉を切ってしまったことが、ますます信憑性を高めてしまう。
気まずい想いで口をつぐむ。
義人くんは、ちょっと驚いたようだったけど、私とは逆にうれしそうに頬を緩めた。
「……そうなんや。」
私はただ黙って首をぶるぶると横に振った。
でも義人くんは、臆せずふわりと私を抱きしめた。
中学2年生でも私よりは背が高いのよね……。
それにしても、薄いな。
腕や首の細さと胸板の薄さを改めて感じた。
……でも、私をお姫様抱っこできる腕力はあるんだもんなあ……男の子って、すごい。
意識すると、ますます自分胸の鼓動が大きくなった気がした。
「……違うの。」
力なくそう否定する。
「今さら、遅い。俺はその気になった。」
耳元でそう囁かれて、ドキッとした。
その気って……いや、それはまずい!
慌てて私は義人くんからもがき離れた。
少し弾んだ息を整えてから、ちょっと睨んで見せた。
「君だって、他に相手はいっぱいいるんでしょ。私はそういう遊びには付き合えないから。」
義人くんは、ハッとしたようだが、すぐに否定した。
「夏子さん、たぶん誤解してるわ。」
「誤解?女子大生の寮に入り浸ってるのに?朝帰りもしょっちゅうしてたじゃないの。」
こんなこと言いたくなかったのに……言っちゃった。
生徒の1人でしかない男子の女性関係に口出しする必要ないのに。
……何だか、自分がものすごく嫉妬深い女みたいで嫌になる。
義人くんは、頭を掻いた。
「やっぱり誤解。ちゃんと説明するから!夕方行く。鍵開けてや!」
時計を見て、義人くんは渋々保健室から出て行った。