カフェ・ブレイク
ホスト夫妻と別れたら、何だか一気に疲れてしまった。
挨拶も済んだことだし、帰ろうかしら。
お料理は確かに美味しそうだけど、慣れない帯が苦しくて、とても食べられそうにない。
ボーッと桜を見上げてると、義人くんが再びやってきた。
「あっちで野点(のだて)もやってるけど、どう?」
「お抹茶?いいわね。ありがとう。」
当たり前のように手を差し伸べられた。
「……1人で立てるけど。」
気恥ずかしくてそんなふうに言ったけど、義人くんは笑ってた。
「恥ずかしがらんでもいいって。鼻緒ずれできてるんちゃう?歩くの、つらそう。」
……隠してるのに、何でわかっちゃうのー。
「何やったら、先に手当てするか?血ぃ出てきたら足袋も汚れるし。」
「う……お願いします。」
替えの足袋なんか持ってきてるはずもない。
ここは素直に義人くんのお世話になることにした。
義人くんは私の手を引いてご機嫌さんになった。
「夏子さんに頼られるの、はじめてかも。……抱っこして連れてこうか?」
「……それは遠慮する。恥ずかしいから。」
「もう誰も来いひん。……自宅には妹がいるけど。」
「妹さんは、園遊会には参加されてないの?」
「……父親の愛人が何人も来るとこに同席させたくないやろ。」
あ~……。
「要人さんも変な人だけど、義人くんのお母様も、ものすごーく心の広いヒトなのね。」
思わずそう言うと、義人くんは私をマジマジと見た。
「夏子さんも変な人やと思うで。」
……そう?
あ、そうか。
義人くん、私も要人さんと関係あるって思い込んでるから。
「あのね、何度も蒸し返すけど、私、要人さんに囲われてないわよ?」
こんなこと言わせないでよ……と、恥ずかしくなりながらそう言った。
義人くんは私を一瞥してから、吐き捨てるように言った。
「……初恋の続きの気分なんだとさ。」
要人さん……何を言ってんだか。
もう~~~~。
義人くんもさあ、要人さんの言葉より私を信じてくれないかなあ。
苛ついてるからか、義人くんの歩みがさっきより速くなった。
「あの、もうちょっとゆっくりお願いできるかな……あああああっ!痛っ!」
言ってる尻から、私は飛び石の縁から足を滑らし、その衝撃で草履の鼻緒が切れてしまった。
みるみるうちに、血が滲む。
……やっちゃった。
「ごめんっ!」
さすがに義人くんは顔色を変えて、そう謝ってくれた。
そして、私の足元にしゃがんで、切れた草履を脱がせると、そのまま膝裏に手をあてがい、一気にお姫さま抱っこをしてくれた。
挨拶も済んだことだし、帰ろうかしら。
お料理は確かに美味しそうだけど、慣れない帯が苦しくて、とても食べられそうにない。
ボーッと桜を見上げてると、義人くんが再びやってきた。
「あっちで野点(のだて)もやってるけど、どう?」
「お抹茶?いいわね。ありがとう。」
当たり前のように手を差し伸べられた。
「……1人で立てるけど。」
気恥ずかしくてそんなふうに言ったけど、義人くんは笑ってた。
「恥ずかしがらんでもいいって。鼻緒ずれできてるんちゃう?歩くの、つらそう。」
……隠してるのに、何でわかっちゃうのー。
「何やったら、先に手当てするか?血ぃ出てきたら足袋も汚れるし。」
「う……お願いします。」
替えの足袋なんか持ってきてるはずもない。
ここは素直に義人くんのお世話になることにした。
義人くんは私の手を引いてご機嫌さんになった。
「夏子さんに頼られるの、はじめてかも。……抱っこして連れてこうか?」
「……それは遠慮する。恥ずかしいから。」
「もう誰も来いひん。……自宅には妹がいるけど。」
「妹さんは、園遊会には参加されてないの?」
「……父親の愛人が何人も来るとこに同席させたくないやろ。」
あ~……。
「要人さんも変な人だけど、義人くんのお母様も、ものすごーく心の広いヒトなのね。」
思わずそう言うと、義人くんは私をマジマジと見た。
「夏子さんも変な人やと思うで。」
……そう?
あ、そうか。
義人くん、私も要人さんと関係あるって思い込んでるから。
「あのね、何度も蒸し返すけど、私、要人さんに囲われてないわよ?」
こんなこと言わせないでよ……と、恥ずかしくなりながらそう言った。
義人くんは私を一瞥してから、吐き捨てるように言った。
「……初恋の続きの気分なんだとさ。」
要人さん……何を言ってんだか。
もう~~~~。
義人くんもさあ、要人さんの言葉より私を信じてくれないかなあ。
苛ついてるからか、義人くんの歩みがさっきより速くなった。
「あの、もうちょっとゆっくりお願いできるかな……あああああっ!痛っ!」
言ってる尻から、私は飛び石の縁から足を滑らし、その衝撃で草履の鼻緒が切れてしまった。
みるみるうちに、血が滲む。
……やっちゃった。
「ごめんっ!」
さすがに義人くんは顔色を変えて、そう謝ってくれた。
そして、私の足元にしゃがんで、切れた草履を脱がせると、そのまま膝裏に手をあてがい、一気にお姫さま抱っこをしてくれた。