カフェ・ブレイク
車を出してから、ふと気づいた。
「ねえ?……これ、もしかして、『未成年略取』?」
恐る恐るそう尋ねた。

義人くんは、吹き出して笑ったけれど、しばらくしてからゴソゴソと真新しいスマホを取り出した。
「一応連絡しとくわ。あ、そや!これ!やっと解禁なってん。夏子さんのん貸して。赤外線でアドレス交換しとくわ。」
私はバッグごと義人くんに渡した。

「……ほんま、不用心すぎやわ、夏子さん。」
そう言いながら、義人くんは私のバッグの中のスマホを操作し始めた。

「別に、見られて困るものもないし。」
そう言ってから気づいた。

元・夫からたまに送られてくる、未練たらしいメール……あれは、ちょっと見られたくないかも。
ちょっとひやひやしたけれど、義人くんは、余計な詮索はせずに本当にアドレス交換だけして返してくれた。

「あ、もしもし。俺。うん。出た。……野暮なこと聞かんといてーな。うん?さあ、どやろ。あ、でも着替えには帰るわ。よろしく~。」
……着替えに帰る?……もしかして、うちに泊まる気?

しかし義人くん……外泊慣れしすぎ。



「これで2度めね。お姫さま抱っこで、部屋に連れて入ってもらうの。」

マンションの部屋へ向かうエレベーターの中、幾度となくキスされて、すっかり心も身体もとろけてしまった。
「夏子さんが望むなら毎回したるで。」
優しい瞳、優しい声で、義人くんがそう言った。

「……いい。見られたら恥ずかしいから。」
義人くんの肩に顔をうずめるように押しつけた。

「ほな2人きりの時に、」
そこまで言ってから、義人くんは私の耳元に唇を寄せて、声にならない声で囁いた。

「いっぱいかわいがってやるわ。」

ゾワッと背筋に震えが走った。
体の奥が疼く。

こ、高校生なりたてのくせに……くせに……もう……
敵わない。


その日、私は12も年下の男の子に完全降伏した。

「若いって……こういうことなのね。」
ベッドから体を起こすことすらできない。

「いっぺん、シャワー浴びる?連れてったろか?」
……確かに2人とも、数時間たっぷり大汗かいたから……入りたいけど……

「今は無理かも……動けない……」
クスッと義人くんは満足そうに笑ってから、私の頬やうなじ、背中にキスを落とす。
鎮静したはずの快感が、すぐにさざ波立つ。
背中は、反則……。

「すごいね。全身、反応して。やらしい身体。」

……誰のせいよ……。

ぞわっと全身が泡立った。

義人くんの舌が背中を這う。

まだ、するんだろうか……。
< 189 / 282 >

この作品をシェア

pagetop