カフェ・ブレイク
「ね、もう、無理。明日、学校、行けなくなっちゃう……」
もう何度めかわからない白旗を揚げる。

「でも、生(なま)でしていいの今日だけなんやろ?」
……そう……確かに、そう言った。
だって、今日は何も準備してなかったんだもん。

「無責任な子供に子供を作らせるわけにはいかないから。……病気、うつされても困るし……」
当たり前のことだと思うんだけど、義人くん的には腹立たしいらしい。

「他の女とは、もう、せえへんって言うてるやん。」
「……そういうの、望んでないって……何度も言ってる……もっ……」
圧迫感と快感に言葉どころか息もできなくなる。

義人くんのセックスは、想像してたような若い性欲を打ちつけるだけのものではなかった。
……情熱的だし、回復力も若さゆえだけど……何よりも、愛にあふれていた。

愛の言葉も、技巧も、惜しみなく注がれて、私は完全に堕ちた。
夢のように、幸せで気持ちいい時間。
……あまりにも幸せ過ぎて、これっきりでいい、と思ってしまう。

むしろこんな夜が、これから何度もあるなんて……怖すぎる。
心も身体も、義人くんに溺れて、依存してしまう。
危険すぎる。


「夏子さーん。起きて。息してる?お風呂、入れたで。」
いつの間にか、気を失っていたのか……寝てたのか……
義人くんの声で意識を取り戻す。

と、耳の中にぞわぞわ感が走った。
「ひっ!」
慌てて目を開けると、義人くんが舌を出したまま笑ってた。
「……もう……変な起こし方しないで……」
涙が出てきた。

「え!?そんなに気持ち悪かった!?ごめん。」
義人くんは慌てて私を抱き起こして、自分の膝に座らせて抱きしめて、背中を撫でてくれた。

「……ちが……気持ち良すぎて、つらい……もう……」
セックスの最中もさんざん涙をこぼしたので、今さらか、と遠慮なく泣きじゃくりながらそう言った。

「そっか。……ごめん。頭痛くない?」
そう聞かれて、ちょっと考える。
「……言われてみれば、ちょっと痛い。何で?」
「泣いてるし。途中で何度も、白目剥いて、口ぱくぱくしてたし。やり過ぎた?他に痛いとこない?」
「わかんない。」

そう言ってから、おもむろに両手両足を伸ばそうとした。
義人くんから逃れて、普通に座ろうとして……いてててて。
「全身おもだるい。腰は痛い。」

そう訴えると、義人くんは笑って私の足をさすってくれた。
「明日は……もう、今日か。筋肉痛になるかな。熱いお風呂でほぐそうか。おいで。」
するりと抱っこしてくれた義人くんの首に素直に手を回す。

何かもう、小さい女の子に戻って、父親に甘えてる気分。
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