カフェ・ブレイク
昼から、義人くんが保健室にやって来た。
「失礼します。」
神妙にそう言って入って来られて、思わず身構えた。
「あら!竹原くん……どうしたの?目の下に隈(くま)ができてる。寝不足?寝て行く?」
私より先に和田先生が飛び出した。
……他の生徒の時と対応が違いすぎです……先生。
「ありがとうございます。午前中は耐えたんですけど、昼飯食ったら眠くて眠くて……」
義人くんは、いつもよりか細い声色でそう訴えた。
……そりゃ、私は何度も寝落ちしたけど……君はずっとヤッてたとしたら、寝不足になって当たり前よね……と、つい苦笑いが出る。
「夜遊びの睡眠不足なら、ココで補填しないでね。」
そう言ってから、ベッドを整えて提供した。
「ありがとうございます。」
しおらしくそう言ってベッドに入った義人くんは、和田先生がお茶を入れに立った隙に私の腕を引っ張って小声で言った。
「夜まで待てへんかった。」
慌てて、シーッとゼスチャーして、腕を振りほどこうとした。
けどしっかりと手首を捕まえられてしまった。
「こら!」
そう叱ると、義人くんは逆に、シッ!と唇に指を宛てた。
そして、私の手の甲に恭しくキスした。
……もう!
「寝るなら早く寝なさい。」
手を引き抜いて、義人くんの肩を枕に押し付けた。
ゴールデンウィーク初日、元教え子の初舞台を見に行った。
差し入れを持って楽屋口に届けて、教え子の生徒席を受け取った。
1階後方……初舞台生じゃ、こんなもんよね。
プログラムを買って、大劇場の入口へ。
初舞台生全員の顔写真を飾った大きなパネルの前へ行く。
才迫れいは、逸美(はやみ)レイラという名前を付けてまだあまり美味くない男役メイクで写真に写っていた。
素顔のほうがよっぽど美人ね、と苦笑が出た。
初舞台生の挨拶で開幕。
緑の袴でずらっと並んだ初々しい初舞台生の面々から、双眼鏡でれいちゃんを探す。
いた!
背が高いれいちゃんは舞台の端で、一生懸命歌い踊っていた。
キラキラした笑顔がまぶしくて、私は保護者のように涙をボロボロ流しながら見ていた。
立派になって……。
これから彼女がもっと輝けますように。
みんなに愛される舞台人になれますように。
夜、当たり前のようにやって来た義人くんに、プログラムを見せながら教え子の晴れ姿を熱く語った。
「へえ~。俺も観たい。今度連れてってーな。デートしよ。……京都じゃないならいいやろ?」
デート?
「……よくない。てか、釣り合わない。姉と弟ぐらいにしか見えないんじゃない?嫌よ。」
けんもほろろにそう言ってしまい、義人くんはちょっとムッとしたらしい。
その日は、いつもよりねちっこく、ちょっと意地悪く抱かれてしまった……。
「失礼します。」
神妙にそう言って入って来られて、思わず身構えた。
「あら!竹原くん……どうしたの?目の下に隈(くま)ができてる。寝不足?寝て行く?」
私より先に和田先生が飛び出した。
……他の生徒の時と対応が違いすぎです……先生。
「ありがとうございます。午前中は耐えたんですけど、昼飯食ったら眠くて眠くて……」
義人くんは、いつもよりか細い声色でそう訴えた。
……そりゃ、私は何度も寝落ちしたけど……君はずっとヤッてたとしたら、寝不足になって当たり前よね……と、つい苦笑いが出る。
「夜遊びの睡眠不足なら、ココで補填しないでね。」
そう言ってから、ベッドを整えて提供した。
「ありがとうございます。」
しおらしくそう言ってベッドに入った義人くんは、和田先生がお茶を入れに立った隙に私の腕を引っ張って小声で言った。
「夜まで待てへんかった。」
慌てて、シーッとゼスチャーして、腕を振りほどこうとした。
けどしっかりと手首を捕まえられてしまった。
「こら!」
そう叱ると、義人くんは逆に、シッ!と唇に指を宛てた。
そして、私の手の甲に恭しくキスした。
……もう!
「寝るなら早く寝なさい。」
手を引き抜いて、義人くんの肩を枕に押し付けた。
ゴールデンウィーク初日、元教え子の初舞台を見に行った。
差し入れを持って楽屋口に届けて、教え子の生徒席を受け取った。
1階後方……初舞台生じゃ、こんなもんよね。
プログラムを買って、大劇場の入口へ。
初舞台生全員の顔写真を飾った大きなパネルの前へ行く。
才迫れいは、逸美(はやみ)レイラという名前を付けてまだあまり美味くない男役メイクで写真に写っていた。
素顔のほうがよっぽど美人ね、と苦笑が出た。
初舞台生の挨拶で開幕。
緑の袴でずらっと並んだ初々しい初舞台生の面々から、双眼鏡でれいちゃんを探す。
いた!
背が高いれいちゃんは舞台の端で、一生懸命歌い踊っていた。
キラキラした笑顔がまぶしくて、私は保護者のように涙をボロボロ流しながら見ていた。
立派になって……。
これから彼女がもっと輝けますように。
みんなに愛される舞台人になれますように。
夜、当たり前のようにやって来た義人くんに、プログラムを見せながら教え子の晴れ姿を熱く語った。
「へえ~。俺も観たい。今度連れてってーな。デートしよ。……京都じゃないならいいやろ?」
デート?
「……よくない。てか、釣り合わない。姉と弟ぐらいにしか見えないんじゃない?嫌よ。」
けんもほろろにそう言ってしまい、義人くんはちょっとムッとしたらしい。
その日は、いつもよりねちっこく、ちょっと意地悪く抱かれてしまった……。