カフェ・ブレイク
「コーヒー豆は店にしかないから、一緒に来て、一杯飲んでから帰ったら?」
「……そうだな。そうさせてもらうわ。……て、美味いな。さすが、マスター。」
「店では調理しないけどな。」
そう言いながら、ふと気になった。
「なあ、玲子、病院なんだよな?お前、1人でちゃんと飯、食えるの?」
小門は首をかしげた。
「まあ、適当に。……でも、当分会社に入り浸ることになるから……社食と出前で何とかなるか。」
「会社?忙しいのか?引き継ぎとか?」
「それもあるけど……伊織が逝ってからずっと休んでたからな。取り返さないと。」
……そういえば、そうだったな。
「そっか。大変だな。……いつでも、羽根休めに来いよ。ココでも店でも。」
優しくしてやるからさ。
小門は、ちょっと目を細めてうなずいてから、にやりと笑った。
「でもいいのか?古城、学生時代みたいに女の子、連れ込んでないの?」
「……ないねえ。びっくりするぐらい、ないわ。」
自嘲気味にそう返事した。
「イイ子いないの?……あの子は?なっちゃん。」
小門にそう言われて、つい笑ってしまった。
「10も年下だぜ?てか、あの子はダメ。母親があからさまに娘を宛がおうとしてるから、めんどくさい。それに遊びで手を出すのは可哀想だし。」
でも小門は笑いをおさめて、真顔で言った。
「何だ、けっこうマジに考えてあげてるんや。……遊びじゃなくて、本気で向き合ってあげたら?イイ子じゃないの、一途だし。もう……3年ぐらい?ずっとお前のこと、好きなんだろ?」
小門の言葉は、けっこう俺に突き刺さった。
マジ?
俺が?
向き合う?
本気で?
なっちゃんと?
「……イイ子だし、綺麗になったし、あの子の気持ちもわかってるけど……俺は……」
俺は、なっちゃんには、本気にはなれないと思う。
いや、なっちゃんだけじゃない。
今はたぶん、他の誰にも本気になれない。
隠しても否定しても押さえ付けても消えないあの女性(ひと)への想いがある限り。
ため息をついて、小門を見た。
……お前に真澄さんを紹介されたあの時から、俺の本気は行き場を失ったままなんだよ。
……出逢った時には、親友の婚約者だった。
幸せな結婚を心から祝福した。
なのに……。
「真澄さんのところに戻れよ。」
開店前に、小門とコーヒーを飲みながら、ついそう言ってしまった。
小門は、悲しげなほほ笑みを浮かべた。
「今さら?どの面(つら)さげて?……それに、今の玲子を見捨てられるわけないだろ。」
完全に諦めてる小門に少し腹が立った。
この先も真澄さんを苦しめるつもりか。
……真澄さんも、頼之(よりゆき)くんも、小門を求めてるのに。
「……そうだな。そうさせてもらうわ。……て、美味いな。さすが、マスター。」
「店では調理しないけどな。」
そう言いながら、ふと気になった。
「なあ、玲子、病院なんだよな?お前、1人でちゃんと飯、食えるの?」
小門は首をかしげた。
「まあ、適当に。……でも、当分会社に入り浸ることになるから……社食と出前で何とかなるか。」
「会社?忙しいのか?引き継ぎとか?」
「それもあるけど……伊織が逝ってからずっと休んでたからな。取り返さないと。」
……そういえば、そうだったな。
「そっか。大変だな。……いつでも、羽根休めに来いよ。ココでも店でも。」
優しくしてやるからさ。
小門は、ちょっと目を細めてうなずいてから、にやりと笑った。
「でもいいのか?古城、学生時代みたいに女の子、連れ込んでないの?」
「……ないねえ。びっくりするぐらい、ないわ。」
自嘲気味にそう返事した。
「イイ子いないの?……あの子は?なっちゃん。」
小門にそう言われて、つい笑ってしまった。
「10も年下だぜ?てか、あの子はダメ。母親があからさまに娘を宛がおうとしてるから、めんどくさい。それに遊びで手を出すのは可哀想だし。」
でも小門は笑いをおさめて、真顔で言った。
「何だ、けっこうマジに考えてあげてるんや。……遊びじゃなくて、本気で向き合ってあげたら?イイ子じゃないの、一途だし。もう……3年ぐらい?ずっとお前のこと、好きなんだろ?」
小門の言葉は、けっこう俺に突き刺さった。
マジ?
俺が?
向き合う?
本気で?
なっちゃんと?
「……イイ子だし、綺麗になったし、あの子の気持ちもわかってるけど……俺は……」
俺は、なっちゃんには、本気にはなれないと思う。
いや、なっちゃんだけじゃない。
今はたぶん、他の誰にも本気になれない。
隠しても否定しても押さえ付けても消えないあの女性(ひと)への想いがある限り。
ため息をついて、小門を見た。
……お前に真澄さんを紹介されたあの時から、俺の本気は行き場を失ったままなんだよ。
……出逢った時には、親友の婚約者だった。
幸せな結婚を心から祝福した。
なのに……。
「真澄さんのところに戻れよ。」
開店前に、小門とコーヒーを飲みながら、ついそう言ってしまった。
小門は、悲しげなほほ笑みを浮かべた。
「今さら?どの面(つら)さげて?……それに、今の玲子を見捨てられるわけないだろ。」
完全に諦めてる小門に少し腹が立った。
この先も真澄さんを苦しめるつもりか。
……真澄さんも、頼之(よりゆき)くんも、小門を求めてるのに。