カフェ・ブレイク
身動きが取れないぐらいしっかりと私を抱きしめて眠る義人くんのぬくもりは、心地よすぎて……私は先のことなんて考えられなくなっていた。
許されるなら、このままこうして眠る夜を重ねていたい。
そんな私のワガママは義人くんにしっかり伝わっているらしい。
義人くんはその後も足繁く通ってくれては、一緒に料理をしたり、たわいもないおしゃべりをしたり……「身体だけの関係じゃない」という彼の主張を体現しているようだった。
実際、精神的な共依存も強くなっていた。
以前の彼なら決してこぼさなかった弱音や不安、愚痴を聞くことも増えた。
楽しいのは、松本くんや梅宮くんの話、そして反応に困るのはやっぱり他の女の子の話。
……梅宮くんにはこのほどめでたく彼女ができたらしい。
名門女子校で生徒会役員なんかもやってる才女で、珍しく梅宮くんが彼女に惹かれてたので義人くんも骨を折って取り持ってみれば、何のことはない、2人は幼なじみだったらしい。
「先、言えや……、って気分。」
拗ねてるのはそれだけじゃなさそうだけど、まあ、義人くんは梅宮くんの女形が好きなのであって、決して梅宮くんという男に惚れてるわけじゃないと言い張ってるので、そっとしておいた。
義人くんが高校2年生になる春休み、夜中に2人で桜を見に行った。
ちょうど3年前、2人で荷物を運びながら見た桜は、闇の中でも毅然とした白い孤高の姿が美しかった。
こんな風に2人で手をつないで見られることがうれしくて、少し涙が出た。
義人くんも感極まったらしく、手に強く力がこもった。
夢のように幸せだった……。
この春は、義人くんがあちこちの桜を見に連れ出してくれた。
真夜中なら2人で出かける抵抗感も半減し、私も素直に手をつなぎ寄り添えた。
本社の桜も、義人くんの自宅の桜も、有名な桜守の庭園も……夜中にこっそり忍び込んで2人だけで堪能した。
京都の街に祇園囃子が流れ始めた頃、義人くんは心の闇を抱え切れなくなったらしく……ぽつりとこぼした。
「なあ。俺、阿呆なことしてしもたわ……」
「なぁに?……とうとう、女の子、妊娠させちゃった?」
冗談のつもりはなく、半分以上本気でそう聞いた。
義人くんは、ため息をついた。
「それはない。病気も妊娠もさせへんようにしてる。……夏子さんに迷惑かけたくないしね。まあ、夏子さんはいつ妊娠してくれてもウェルカムやけど。」
「私だって困るわ。」
義人くんが本気なことがわかってるので、拒絶する。
許されるなら、このままこうして眠る夜を重ねていたい。
そんな私のワガママは義人くんにしっかり伝わっているらしい。
義人くんはその後も足繁く通ってくれては、一緒に料理をしたり、たわいもないおしゃべりをしたり……「身体だけの関係じゃない」という彼の主張を体現しているようだった。
実際、精神的な共依存も強くなっていた。
以前の彼なら決してこぼさなかった弱音や不安、愚痴を聞くことも増えた。
楽しいのは、松本くんや梅宮くんの話、そして反応に困るのはやっぱり他の女の子の話。
……梅宮くんにはこのほどめでたく彼女ができたらしい。
名門女子校で生徒会役員なんかもやってる才女で、珍しく梅宮くんが彼女に惹かれてたので義人くんも骨を折って取り持ってみれば、何のことはない、2人は幼なじみだったらしい。
「先、言えや……、って気分。」
拗ねてるのはそれだけじゃなさそうだけど、まあ、義人くんは梅宮くんの女形が好きなのであって、決して梅宮くんという男に惚れてるわけじゃないと言い張ってるので、そっとしておいた。
義人くんが高校2年生になる春休み、夜中に2人で桜を見に行った。
ちょうど3年前、2人で荷物を運びながら見た桜は、闇の中でも毅然とした白い孤高の姿が美しかった。
こんな風に2人で手をつないで見られることがうれしくて、少し涙が出た。
義人くんも感極まったらしく、手に強く力がこもった。
夢のように幸せだった……。
この春は、義人くんがあちこちの桜を見に連れ出してくれた。
真夜中なら2人で出かける抵抗感も半減し、私も素直に手をつなぎ寄り添えた。
本社の桜も、義人くんの自宅の桜も、有名な桜守の庭園も……夜中にこっそり忍び込んで2人だけで堪能した。
京都の街に祇園囃子が流れ始めた頃、義人くんは心の闇を抱え切れなくなったらしく……ぽつりとこぼした。
「なあ。俺、阿呆なことしてしもたわ……」
「なぁに?……とうとう、女の子、妊娠させちゃった?」
冗談のつもりはなく、半分以上本気でそう聞いた。
義人くんは、ため息をついた。
「それはない。病気も妊娠もさせへんようにしてる。……夏子さんに迷惑かけたくないしね。まあ、夏子さんはいつ妊娠してくれてもウェルカムやけど。」
「私だって困るわ。」
義人くんが本気なことがわかってるので、拒絶する。