カフェ・ブレイク
苦笑してから義人くんは、重い口を開いた。

「小さい頃から俺に憧れてくれてる女の子がいてんけどな、その子が俺の妹に暴言と暴力ふるったことが忘れられへんくて……復讐のつもりでずっと翻弄しててんわ。」

……ずっと、って……

「優しくしたり、冷たくしたり、会う度に態度変えて、その子の気持ちをもてあそんでた。3つも下の女の子が赤くなったり青くなったりするのをほくそ笑んで見てた。」

……うわぁ……鬼だ。
かわいそうに、その女の子。

「3つ下なら、今年は中2?……もしかしてヤッちゃって、はじめて罪悪感いだいたの?」

義人くんは、顔をしかめてうなずいた。

「……最悪-!最低-!鬼畜-!女の敵-!……遊びならいくらでも止めないけど、それはひどいわ。本気で慕ってる子を!?かわいそうに……」

私は義人くんをポカポカと軽く叩きながらそう怒って聞いてみた。

「うん。俺が悪い。全面的に悪い。てか、半分遊びのつもりやってん、俺は。」
「あと半分は、復讐?……マジ、ひどい!処女よね?かわいそうすぎる~~~!」

そんな悪さするなら、他の女の子と遊べ、なんて言うんじゃなかった。
私自身も後ろめたさを感じて、何度も義人くんの手をつねった。

「痛っ!……なるべくならこれ以上傷つけんようにフェードアウトしたいねんけど……家の関係もあるから顔合わす機会もあるし……先のこと何も考えてへんかった自分の阿呆さ加減にあきれるわ。てか、俺がほんまに鬼畜やったら平然と挨拶できるんやろけど。」

家の関係、という言葉に、引っかかりを覚えた。
3つ下?
……妹さんも3つ下だったよね?
まさか……

「橘(たちばな)……百合子(ゆりこ)さん?」

要人さんから聞いていた名前を恐る恐る出してみた。

義人くんは、驚いた顔をした。
「何で知ってるん?」

……ああ……そんな……。
全身に震えが走り、血の気が引いていく。
罪悪感で打ちのめされそうになる。

どうしよう……
義人くん、半分血のつながった妹さんの初めての相手になっちゃったんだ……愛情もないのに……。



私の反応はあからさまにおかしかった……。
聡い義人くんは、それだけで察知した。
「夏子さん?もしかして、俺の父親から、何か聞いてる?」

私はぶるぶると首を振った。
「お願い……聞かないで……」

とても言えない。
こんな大事なこと、私が話していいことじゃない。
義人くんは、じっと私を見ていたけど、しばらくして天を仰いだ。

「わかった。てか、聞かなくてもわかってるから。いいよ。」

知ってた?
知ってて、異母妹を抱いたの?
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