カフェ・ブレイク
要人(かなと)さんは、今まで以上に世話を焼いてくれるようになった。
……お腹の子の祖父だと思うと、むげに断れない。
本当ならご自分の手元で育てたいという想いがひしひしと伝わってくる。
その都度、恐縮して謝るのだが……
「夏子さんをつなぎ止める魅力のない愚息が悪い。」
と、要人さんは最後まで私を責めなかった。
それどころか、養育費代わりに配当のいい株を分けると言い出した。
「いただけません。認知も求めてないのに。いただく理由がありません。」
株なんかもらったら、何年、何十年後かに、義人くんにバレてしまいそうで、私はそう断った。
でも要人さんは、頑として譲らなかった。
「夏子さんにさし上げるのではなく、私の孫に使っていただくためです。」
そして悲しい顔でお願いされた。
「会わせろ、とは言いません。たまにちょっとしたプレゼントをお贈りする自己満足を許してもらえますか?」
……下手に出られれば出られるほど、私の胸は罪悪感で痛んだ。
「Daddy-Long-Legsですね。」
要人さんはピンと来なかったらしく、キョトンとしてドアのそばに控えてらした秘書の原さんを見た。
原さんは冷ややかな目で言った。
「あしながおじさん、ですね。アメリカの児童文学です。……つまり大瀬戸さまは、毎月1通、社長に手紙で報告するとおっしゃっているようです。」
は?
何でそうなるの?
月1回のお手紙って……え~……いや、確かに「あしながおじさん」は書簡体小説だけど。
やっぱり原さん、怖い。
7月の蒸し暑い夜。
れいちゃんの出演する新人公演を、義人くんと一緒に観に行った。
要人さんの会社のポスターに使ってもらったことで、れいちゃんは過分な抜擢を受けたらしい。
……でも……現実は厳しい。
れいちゃんは、やっぱり普段の美貌を舞台で活かしきれてない。
メイクが下手なのか、姿勢が悪いのか……歌、ダンス、演技、どれをとってもそう悪くはないのだが、よくもない気がした。
……一期上の上級生が、下手くそで癖が強くても、妙にキラキラ輝いていることを考えると……「華がない」つまり「スター性に欠ける」のだろうか。
終演後、既に大勢のファンに出待ちされているれいちゃんを、少し離れたところから義人くんと見ていた。
「やっぱり、れいは舞台より画像とか映像向きかもしれんな。」
意外とシビアな義人くんの評価にうなずきながらも……れいちゃんを呼び捨てしてることに内心動揺した。
2人は、うまくいってるのね……
……お腹の子の祖父だと思うと、むげに断れない。
本当ならご自分の手元で育てたいという想いがひしひしと伝わってくる。
その都度、恐縮して謝るのだが……
「夏子さんをつなぎ止める魅力のない愚息が悪い。」
と、要人さんは最後まで私を責めなかった。
それどころか、養育費代わりに配当のいい株を分けると言い出した。
「いただけません。認知も求めてないのに。いただく理由がありません。」
株なんかもらったら、何年、何十年後かに、義人くんにバレてしまいそうで、私はそう断った。
でも要人さんは、頑として譲らなかった。
「夏子さんにさし上げるのではなく、私の孫に使っていただくためです。」
そして悲しい顔でお願いされた。
「会わせろ、とは言いません。たまにちょっとしたプレゼントをお贈りする自己満足を許してもらえますか?」
……下手に出られれば出られるほど、私の胸は罪悪感で痛んだ。
「Daddy-Long-Legsですね。」
要人さんはピンと来なかったらしく、キョトンとしてドアのそばに控えてらした秘書の原さんを見た。
原さんは冷ややかな目で言った。
「あしながおじさん、ですね。アメリカの児童文学です。……つまり大瀬戸さまは、毎月1通、社長に手紙で報告するとおっしゃっているようです。」
は?
何でそうなるの?
月1回のお手紙って……え~……いや、確かに「あしながおじさん」は書簡体小説だけど。
やっぱり原さん、怖い。
7月の蒸し暑い夜。
れいちゃんの出演する新人公演を、義人くんと一緒に観に行った。
要人さんの会社のポスターに使ってもらったことで、れいちゃんは過分な抜擢を受けたらしい。
……でも……現実は厳しい。
れいちゃんは、やっぱり普段の美貌を舞台で活かしきれてない。
メイクが下手なのか、姿勢が悪いのか……歌、ダンス、演技、どれをとってもそう悪くはないのだが、よくもない気がした。
……一期上の上級生が、下手くそで癖が強くても、妙にキラキラ輝いていることを考えると……「華がない」つまり「スター性に欠ける」のだろうか。
終演後、既に大勢のファンに出待ちされているれいちゃんを、少し離れたところから義人くんと見ていた。
「やっぱり、れいは舞台より画像とか映像向きかもしれんな。」
意外とシビアな義人くんの評価にうなずきながらも……れいちゃんを呼び捨てしてることに内心動揺した。
2人は、うまくいってるのね……