カフェ・ブレイク
軽率、か。
そりゃ、俺のことだよ。
苦笑しながら鍋の蓋を開けると、黒い。
八丁味噌の煮込みうどんか!
……鶏肉とねぎがたっぷり入ってて、本当にうどんを入れるだけの状態だった。
味も旨い。
コクと酸味が食欲をわかせた。
うどんを食いながら、なっちゃんの置き手紙を手にとってしげしげと眺めた。
ん?
裏にも文字が記されていた。
「またお店にうかがっていいですか?」
……くっ、と、笑いがこみ上げた。
YESもNOも、伝えようがないじゃないか。
手の掛かるお嬢さんだ。
さっきまでとは違う気分で、俺は再び寝室に戻った。
明日の朝は、気分よく目覚められそうだ。
翌日は、店に出た。
念のためにマスクをつけて、少しだけ厚着をして。
「マスター、バイト雇うたら?今回みたいに急に店が休みになるの、淋しいわ。」
常連さんにそんな風に言われて、申し訳なくなる。
「でも、そうすると、人件費をお代金に上乗せしてちょうだいすることになりますよ?」
「え!?」
……慌てて打ち消す常連さん達と笑い合う。
いつもの楽しい時間を過ごしながらも、なっちゃんの来店を待っていた。
でもその日、なっちゃんは店に来なかった。
次の日も、その次の日も。
世話をしてもらった礼もまともに言えてないまま、時が過ぎていく。
2月に入ってすぐ、小門が喪服でやってきた……黒塗りの運転手付きの車を店の前に横付けして。
「葬式?ずいぶん続くな。」
小門は何とも微妙な表情で、カウンターの席についた。
「……真澄の母親が亡くなったって会社に連絡が来たから、すぐに駆け付けたんやけど……」
え!?
「お父さんが先月亡くなったばかりなのに!?」
あの広い家に、これから真澄さんと頼之くん、2人だけになるのか?
「ああ。お義母さんのほうが持病もあって弱ってらしたんだけど……それにしても早すぎるよな。」
小門はため息をついた。
「いつ?今晩、お通夜?」
俺も会葬に行かせてもらう気満々でそう聞いた。
「それが……家族葬で済ますから、いらない、と追い返されてしまって。」
小門が情けない顔でそう言った。
「家族葬……に、入れてもらえないんだ?お前。」
さすがに可哀想な気もするが、そういうもんなのか?
「会社以外で、俺に関わりたくない、ってことなんかな。」
しょんぼりする小門を慰める言葉も思いつかなくて、俺は無言でコーヒーの準備を始めた。
そりゃ、俺のことだよ。
苦笑しながら鍋の蓋を開けると、黒い。
八丁味噌の煮込みうどんか!
……鶏肉とねぎがたっぷり入ってて、本当にうどんを入れるだけの状態だった。
味も旨い。
コクと酸味が食欲をわかせた。
うどんを食いながら、なっちゃんの置き手紙を手にとってしげしげと眺めた。
ん?
裏にも文字が記されていた。
「またお店にうかがっていいですか?」
……くっ、と、笑いがこみ上げた。
YESもNOも、伝えようがないじゃないか。
手の掛かるお嬢さんだ。
さっきまでとは違う気分で、俺は再び寝室に戻った。
明日の朝は、気分よく目覚められそうだ。
翌日は、店に出た。
念のためにマスクをつけて、少しだけ厚着をして。
「マスター、バイト雇うたら?今回みたいに急に店が休みになるの、淋しいわ。」
常連さんにそんな風に言われて、申し訳なくなる。
「でも、そうすると、人件費をお代金に上乗せしてちょうだいすることになりますよ?」
「え!?」
……慌てて打ち消す常連さん達と笑い合う。
いつもの楽しい時間を過ごしながらも、なっちゃんの来店を待っていた。
でもその日、なっちゃんは店に来なかった。
次の日も、その次の日も。
世話をしてもらった礼もまともに言えてないまま、時が過ぎていく。
2月に入ってすぐ、小門が喪服でやってきた……黒塗りの運転手付きの車を店の前に横付けして。
「葬式?ずいぶん続くな。」
小門は何とも微妙な表情で、カウンターの席についた。
「……真澄の母親が亡くなったって会社に連絡が来たから、すぐに駆け付けたんやけど……」
え!?
「お父さんが先月亡くなったばかりなのに!?」
あの広い家に、これから真澄さんと頼之くん、2人だけになるのか?
「ああ。お義母さんのほうが持病もあって弱ってらしたんだけど……それにしても早すぎるよな。」
小門はため息をついた。
「いつ?今晩、お通夜?」
俺も会葬に行かせてもらう気満々でそう聞いた。
「それが……家族葬で済ますから、いらない、と追い返されてしまって。」
小門が情けない顔でそう言った。
「家族葬……に、入れてもらえないんだ?お前。」
さすがに可哀想な気もするが、そういうもんなのか?
「会社以外で、俺に関わりたくない、ってことなんかな。」
しょんぼりする小門を慰める言葉も思いつかなくて、俺は無言でコーヒーの準備を始めた。