カフェ・ブレイク
……これは、マジでやばいかもしれない。
思わず生唾を飲み込んだ。


「小門が気になること言ってたんだけど、なっちゃん、なんかあった?心配してたけど。」

空気を変えようと、本題を切り出した。
「あー。えーっと、そうですね。とりあえず、食べましょうか。あんまり楽しい話じゃないんで。」

そう言ってなっちゃんは、キッチンから料理を盛った皿を運んできた。
メインは、ロールキャベツ?いや、違うな。

「これは?」
「ロール白菜。和風で美味しいですよ。」

そう言いながら、次に出してくれたのは、切り干し大根。
それから、里芋とイカの煮っころがし。
ひろうすの餡かけ。
……柚子大根もあった

「味、薄くないですか?……てか、章(あきら)さん、がっつり洋食の方がお好きですか?」
「いや。美味いものは何でも好き。」
だから、なっちゃんの料理はどれも好きだ。
マジで旨い。

ロール白菜は、豚ロースと青紫蘇を白菜で巻いて、一番だしで炊いてあった。
こんなもん、美味くないわけないだろー!

柚子大根も、悔しいけど、旨い。
「これも、あんなに砂糖入っとるんや?」
なっちゃんは苦笑して、うなずいた。

「お正月の親戚の集まりに挨拶に来るように言われて行ったんですけどね、当然いるべき彼が急な仕事でいなかったんです。それで、紹介してもらえないままお手伝いだけしてきました。お義姉さんが冗談で私を『家政婦さん』と仰ったので、親類にそう思われたようです……と、ずいぶんと好意的に解釈して玲子(れいこ)さんに愚痴ったら、それは冗談じゃなくて、嫁いびりだと心配されました。」

食後、柚子大根で焼酎を舐めながら、なっちゃんが一気にそう言った。
……それは確かに、小姑による嫁いびり、のような気がする。

「で、はじめて向こうのご両親とじっくり話したのですが、お2人とも保守的で、同居と家事専念を頼まれました。別居も働くことも結婚承諾の条件だったんですけどね、ご両親は聞いてなかったそうです。」
「……あ~~~~~。」

確かに大変そうだ。
大丈夫か?って、心配になってきた。
「旦那はどう言ってんの?」

なっちゃんは、片頬をひきつらせた。
「仕事したいなら、同居のほうが楽じゃない?って。……何もわかってませんよね、それ。」

……確かに、ひどいな。
そんな結婚、やめたら?
そう言いたくなってしまう。

「前途多難だな。」
それだけ言って、俺も焼酎を口中で転がした。

余計なことは言うまい。

無責任に煽ってもいけない。
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