カフェ・ブレイク
はあ?
「学校でそんなこと……」
「やりまくりですよ。教師も生徒も。」
そう言って、中沢先生はニヤニヤ笑った。
「特にココほど設備が整ったところはありませんからね。」
中沢先生は、ベッドをポンポンと軽く叩いた。
「……そんな目的のためにベッドがあるんじゃありません。隠れんぼするためでもないですよ!」
私は、中沢先生に強い口調でそう言った。
「はいはい。次の授業の準備があるんで帰りますよ。またね、夏子さん。」
中沢先生は、鼻歌まじりに保健室を出て行った。
……生徒は優秀な子が多そうだし、荒れた雰囲気も特に感じなくてイイ学校に赴任できたと喜んでたけれど……教師には問題ありだわ。
翌日から、夫と別々に行くことになった。
夫は残念がったけれど、私は愛車のトヨタ86を運転できると思うと、それはそれで楽しみだった。
渋滞を苦にしない夫はこれまで通り国道をのんびり走ったが、私は抜け道を駆使して出勤することにした。
……この選択があやまちだったとは思いたくないのだが……。
横浜市内には坂道がやたら多い。
しかも朝はどうしてもそこかしこで小さな渋滞を起こしているし、信号や踏切の度に、いわゆる「坂道発進」をしなければいけない。
何度も何度も何度も繰り返してるうちに、エンストせずにスムーズに走れるようになってきた。
……習うより慣れろ、だわ。
坂道のクラッチ操作もこなれてきた頃に学校に到着した。
緊張したけど、楽しかった!
テンション高く、車を降りようとして、携帯電話の着信履歴に気づいた。
夫の名前が残っていた。
無事に到着したか心配して、わざわざ電話をかけてきてくれたのかしら。
早速、電話をかけてみた。
すぐに夫が電話に出た。
「夏子です。無事到着しました。栄一さんももう職場ですか?」
夫は少し声のトーンを落として言った。
『いえ。……今、救急車の中です。背後から追突されまして、車が少しへこみました。』
え!?
「栄一さんは!?大丈夫!?」
『今のところ、どこも問題ありません。むち打ち程度だと思うのですが、念のために病院で検査するよう言われたので、行ってきます。終わりましたら、報告もありますので、出勤します。たぶん遅れた分、残業になりますので、今日は遅くなると思いますが……夕食、お願いします。』
……夕食?
夫が手料理を喜んでくれていることはわかっていたつもりだけど、こんな時まで念押しされるとは思わなかった。
「わかりました。でも、お迎えに行かなくてもいいの?車、つぶされちゃったのでしょ?」
『既に加害者側の保険会社から連絡があり、代車を届けてくださるそうです。……でも、今日でよかった。夏子さんが同乗してなくて。』
本心から夫はそう言ってくれていた。
電話を切って、車から降りる。
すぐ隣に、紺色のレガシィが入ってきた。
「おはようございます。なかなかすごい車に乗ってますね、夏子さん。真っ赤なスポーツカーですか。」
薄笑いを浮かべてそう言いながら車を降りたのは、数学の中沢先生だった。
「学校でそんなこと……」
「やりまくりですよ。教師も生徒も。」
そう言って、中沢先生はニヤニヤ笑った。
「特にココほど設備が整ったところはありませんからね。」
中沢先生は、ベッドをポンポンと軽く叩いた。
「……そんな目的のためにベッドがあるんじゃありません。隠れんぼするためでもないですよ!」
私は、中沢先生に強い口調でそう言った。
「はいはい。次の授業の準備があるんで帰りますよ。またね、夏子さん。」
中沢先生は、鼻歌まじりに保健室を出て行った。
……生徒は優秀な子が多そうだし、荒れた雰囲気も特に感じなくてイイ学校に赴任できたと喜んでたけれど……教師には問題ありだわ。
翌日から、夫と別々に行くことになった。
夫は残念がったけれど、私は愛車のトヨタ86を運転できると思うと、それはそれで楽しみだった。
渋滞を苦にしない夫はこれまで通り国道をのんびり走ったが、私は抜け道を駆使して出勤することにした。
……この選択があやまちだったとは思いたくないのだが……。
横浜市内には坂道がやたら多い。
しかも朝はどうしてもそこかしこで小さな渋滞を起こしているし、信号や踏切の度に、いわゆる「坂道発進」をしなければいけない。
何度も何度も何度も繰り返してるうちに、エンストせずにスムーズに走れるようになってきた。
……習うより慣れろ、だわ。
坂道のクラッチ操作もこなれてきた頃に学校に到着した。
緊張したけど、楽しかった!
テンション高く、車を降りようとして、携帯電話の着信履歴に気づいた。
夫の名前が残っていた。
無事に到着したか心配して、わざわざ電話をかけてきてくれたのかしら。
早速、電話をかけてみた。
すぐに夫が電話に出た。
「夏子です。無事到着しました。栄一さんももう職場ですか?」
夫は少し声のトーンを落として言った。
『いえ。……今、救急車の中です。背後から追突されまして、車が少しへこみました。』
え!?
「栄一さんは!?大丈夫!?」
『今のところ、どこも問題ありません。むち打ち程度だと思うのですが、念のために病院で検査するよう言われたので、行ってきます。終わりましたら、報告もありますので、出勤します。たぶん遅れた分、残業になりますので、今日は遅くなると思いますが……夕食、お願いします。』
……夕食?
夫が手料理を喜んでくれていることはわかっていたつもりだけど、こんな時まで念押しされるとは思わなかった。
「わかりました。でも、お迎えに行かなくてもいいの?車、つぶされちゃったのでしょ?」
『既に加害者側の保険会社から連絡があり、代車を届けてくださるそうです。……でも、今日でよかった。夏子さんが同乗してなくて。』
本心から夫はそう言ってくれていた。
電話を切って、車から降りる。
すぐ隣に、紺色のレガシィが入ってきた。
「おはようございます。なかなかすごい車に乗ってますね、夏子さん。真っ赤なスポーツカーですか。」
薄笑いを浮かべてそう言いながら車を降りたのは、数学の中沢先生だった。