カフェ・ブレイク
新しい勤務先は、これまでの公立高校とは全く違った。
中学と高校の共同施設として保健室があったため、とにかく広い。
ベッドは8つもあり、保健室に常時詰めている養護教諭は4人。
薬剤師もいるため、薬も出せる。
新卒教諭から定年を過ぎた上品な先任教諭まで、年齢もバラバラだったけれど、女性ばかりで楽しいゆるい保健室だった。

「ここは治外法権なのよ。私たちがニコニコしてないと、生徒も安心できませんからね。」
最年長の養護教諭がそういう感じだからだろう。

心の病で登校拒否の生徒でも、保健室にはやってきた。
……保健室にいるだけで、とりあえずの出席日数は稼げるらしい。
あとは、試験の成績とレポート次第で普通に進学も卒業もできるという。

「何だか天国ですね。」
就職同期の1つ年下の新卒教諭もほんわかした子だった。
「先生方も憩いに来られるから差し入れも多いしね。間違いなく、太るわよ。」
アラフォーの美人な先輩教諭にそうからかわれた。
「そうねえ。10時と3時に必ずお菓子を食べてる割には運動量は少ないものね。」
薬剤師さんは50代……その言葉通り、恰幅のいいかた。

「そう言えば、教頭先生が、部活の顧問や副顧問になることも推奨してらしたのですが、先生方もどこかのクラブに顔を出してらっしゃるんですか?」
私がそう質問すると、先任教諭お2人と薬剤師は顔を見合わせた。
「一応名前だけ、陸上部の副顧問です。記録会に付き添ったり、打ち上げに寸志を出す程度の。」
アラフォー美人がそう肩をすくめた。
「私は、野球部のファンよ~。役職はしてないけど。」
ニコニコと年輩の教諭がおっしゃった。
薬剤師さんも何もやってない、らしく、手を横に小さく振ってからおっしゃった。
「無理することはないけど、何か興味あるなら覗いてみたら?文化系も運動部もサークルもかなりイロイロあっておもしろいと思うわよ?今はまだ春休み中で活動してるところは少ないけど、新入生が入ったらクラブ紹介もあるし。」


新学期が始まり、追って、入学式を迎えた。
数日後、楽しみにしていたクラブ紹介のパフォーマンスが講堂で行われた。

プログラム的に興味津々なのは、ブロードウェイミュージカルナンバーを歌うというコーラス部と、タカラヅカ風に踊るというモダンダンス部……EXILE風に踊るというジャズダンス部もあるらしい。

いずれも短い曲を実際に歌ったり踊ったりしていたが、私はやはりタカラヅカの世界に心惹かれた。
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