カフェ・ブレイク
君の港
美味しい関係、ふたたび
「玲子(れいこ)が、なっちゃんに逢ってきたらしいんだけど……離婚したそうだ。」
うだるような真夏の午後、店内に誰もいなくなったのを見計らって、小門はボソッとそう言った。
情けないことに、俺は一瞬、マジで固まってしまった。
なっちゃんが横浜に嫁いでから、1年半がたつのに、未だに意識して身構えてしまうのか。
「……へえ。玲子、わざわざ横浜に行ったの?」
やっと言葉にできたのは、なっちゃんじゃなく玲子の動向。
素直じゃない自分に失笑が漏れ出た。
そんな俺の心を知ってか知らずか、小門はコーヒーに口をつけてから、おもむろに言った。
「いや。なっちゃん、こっちに来たんだよ。クラブ活動の引率だって。立派に先生してた、って褒めてたよ。」
「はあ!?」
思わずそんな声を発してしまい、俺は慌てて口をつぐんだ。
無理やり作業してるふりをして誤魔化す……どう見ても誤魔化せてないよな。
しかし、どういうつもりだ?
離婚?
先生?
しかも、神戸に来た?
……俺はひとっつも知らされてないんだけど。
てか!
こっちに来たなら、顔出しに来いよ。
知らない仲じゃないだろうが。
苛々してる俺に、小門は追い打ちを掛けた。
「その様子じゃ、なっちゃん、やっぱりお前に逢いに来なかったんだな。」
「やっぱりって何だよ。」
もはや隠そうともせず、俺は不機嫌モードでそう詰め寄った。
小門は肩をすくめた。
「おいおい。俺に当たらないでくれ。……単に、忙しくて自分の時間がなかったらしいよ。生徒だけじゃなくて保護者や教職員も入れると100人以上で来てたらしいから。玲子も立ち話しかできなかったって。」
100人?
「甲子園?野球?」
規模の大きさに驚いてそう聞くと、小門は首をかしげた。
「さあ?違うんじゃない?ダンスとかタカラヅカとか言ってたから。」
タカラヅカ……。
そう言えば、なっちゃん、好きなんだっけ。
緑の袴とか白いドレスとか、はしゃいでたことを思い出した。
よくわからないけど、仕事に趣味を絡められているのなら、まあ、充実した生活を送ってるんだろう。
離婚しても帰ってこないのも、仕事の都合かな。
「そうか。なっちゃん、学校の先生してんの?」
「養護教諭だって。保健室の先生。……白衣、似合うだろうな。」
小門の言葉に誘引されて、俺は頭の中になっちゃんの白衣姿を思い浮かべた。
……でも白衣の下は裸体になってしまい、慌てて妄想を追い払う。
「あんな綺麗な子が保健室にいたら、毎日通うな。俺なら。」
静かに小門はそう言った。
「お前、もしかして、俺を煽ってる?」
しれっとしてるようで、小門は以前から俺になっちゃんを押していた。
小門はそれには返事しなかった。
しばらくして、小門は帰って行った。
うだるような真夏の午後、店内に誰もいなくなったのを見計らって、小門はボソッとそう言った。
情けないことに、俺は一瞬、マジで固まってしまった。
なっちゃんが横浜に嫁いでから、1年半がたつのに、未だに意識して身構えてしまうのか。
「……へえ。玲子、わざわざ横浜に行ったの?」
やっと言葉にできたのは、なっちゃんじゃなく玲子の動向。
素直じゃない自分に失笑が漏れ出た。
そんな俺の心を知ってか知らずか、小門はコーヒーに口をつけてから、おもむろに言った。
「いや。なっちゃん、こっちに来たんだよ。クラブ活動の引率だって。立派に先生してた、って褒めてたよ。」
「はあ!?」
思わずそんな声を発してしまい、俺は慌てて口をつぐんだ。
無理やり作業してるふりをして誤魔化す……どう見ても誤魔化せてないよな。
しかし、どういうつもりだ?
離婚?
先生?
しかも、神戸に来た?
……俺はひとっつも知らされてないんだけど。
てか!
こっちに来たなら、顔出しに来いよ。
知らない仲じゃないだろうが。
苛々してる俺に、小門は追い打ちを掛けた。
「その様子じゃ、なっちゃん、やっぱりお前に逢いに来なかったんだな。」
「やっぱりって何だよ。」
もはや隠そうともせず、俺は不機嫌モードでそう詰め寄った。
小門は肩をすくめた。
「おいおい。俺に当たらないでくれ。……単に、忙しくて自分の時間がなかったらしいよ。生徒だけじゃなくて保護者や教職員も入れると100人以上で来てたらしいから。玲子も立ち話しかできなかったって。」
100人?
「甲子園?野球?」
規模の大きさに驚いてそう聞くと、小門は首をかしげた。
「さあ?違うんじゃない?ダンスとかタカラヅカとか言ってたから。」
タカラヅカ……。
そう言えば、なっちゃん、好きなんだっけ。
緑の袴とか白いドレスとか、はしゃいでたことを思い出した。
よくわからないけど、仕事に趣味を絡められているのなら、まあ、充実した生活を送ってるんだろう。
離婚しても帰ってこないのも、仕事の都合かな。
「そうか。なっちゃん、学校の先生してんの?」
「養護教諭だって。保健室の先生。……白衣、似合うだろうな。」
小門の言葉に誘引されて、俺は頭の中になっちゃんの白衣姿を思い浮かべた。
……でも白衣の下は裸体になってしまい、慌てて妄想を追い払う。
「あんな綺麗な子が保健室にいたら、毎日通うな。俺なら。」
静かに小門はそう言った。
「お前、もしかして、俺を煽ってる?」
しれっとしてるようで、小門は以前から俺になっちゃんを押していた。
小門はそれには返事しなかった。
しばらくして、小門は帰って行った。