One more kiss
One more kiss
彼と対峙した瞬間に、私は思わず自分自身に問いかけた。
本当に?
その気持ち、間違いないの?
サラサラツヤツヤのはちみつ色したラウンドショートヘアー。
あまり幅の広くない二重で、切れ長の涼しげな目元。
高いけどゴツくない、綺麗な稜線を描く鼻筋と、その下に位置するちょっぴり薄めの血色の良い唇。
そして細身で長身のその体躯。
はっきり確認した訳ではないけれど、169センチの私が10センチのヒールを履いてもなお、若干見上げるような感じになるので、180センチ以上は確実にあるハズ。
洗いざらしの白いコットンのシャツと、黒のタイトなパンツというこの上なくシンプルな服装が、むしろ筋肉の程よく着いた、均整のとれたスタイルを際立たせていて、もう、十人中十人が「文句なく男前」と形容するに違いない姿形であった。
だけど本当に、信じられなかった。
石橋を、叩いて叩いて叩きすぎて、粉々に砕いてしまって向こう岸に渡るチャンスを自ら棒に振ってしまう事も多々あるくらい、慎重派のこの私が、初めて会った人のビジュアルに惹かれて一瞬で恋に落ちてしまうなんて。
とりあえず、ご挨拶しなければと口を開こうとしたその瞬間、彼はとびっきりの笑顔を浮かべながら言葉を発した。