One more kiss
「その雑誌の専属になれるのはもちろんのこと、グランプリと準グランプリの人は創刊号の表紙を飾って、さらにはCMにも出られるみたいで」

「大チャンスじゃな~い!ぜひともその仕事、勝ち取らなくちゃねっ」


笑顔でそう言いながら、マコトさんは私の髪に手を伸ばした。


会話に出た通り、今日は新しく発売される雑誌の専属モデルを決めるオーディションがある。


一次審査の書類選考を通過した50人で、次なるステージ、面接と実技審査に挑むのだ。


オーディションによっては会場に美容スタッフさんが控えていて、ヘアアレンジとメイクをお任せできる場合もあるけれど、まだ二次である今回のオーディションに関して言えば、それらは事前に済ませていかなければならない。


面接にどのような服をチョイスして来るか、それに合ったヘアアレンジ、メイクが施されているかどうかも実は審査対象となっているのだった。


それはもうこの業界では暗黙の了解なので、いちいち説明されたりはしないけれど。


と言っても、それは『自分自身を美しく見せるため』ではない。


ファッション雑誌の主役はモデルではなく、あくまでも洋服や小物。


自分が身に付けているそれらの魅力を存分に伝えられているか、美しく見えるような、着こなしと動きができる媒体であるかどうかを審査されるのである。
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