One more kiss
必然的にそれが技術向上に繋がって、瞬く間にトップスタイリストへと上り詰めて行ったらしい。


マコトさんの噂を聞き付けて、雑誌やテレビの取材の申し込みが殺到したそうなのだけれど、一部の美容専門誌を除いてほとんどお断りしてしまったとのこと。


「だってアタシ口下手で、すんごいあがり症だもの」


以前、どうにもこうにも気になって、何故取材に応じなかったのか思わず問い掛けてしまった時に、マコトさんは苦笑しながら答えてくれた。


「内弁慶っていうの?狭いコミュニティの中でなら楽しくおしゃべりする事ができるけど、自分の発言が公に発信されてしまう事が前提の取材っていうのはちょっとねぇ…」

「え?でも、マコトさんなら上手に対応できそうですけど」

「ムリムリ!美容に関する事だけ語れば良いからって言われて、頑張って数件だけ取材に応じてみたけど、それでももういっぱいいっぱいだったもの!」


腑に落ちない表情をしていたのであろう私に、マコトさんは興奮気味に解説を続けた。


「コメントと写真が載るだけの紙媒体のインタビューでもそのザマなんだから。テレビカメラなんか向けられた日にゃもう、頭の中が真っ白になっちゃってテンパりまくっちゃって、何をどうしゃべったら良いのか分かんなくなっちゃうわよ」

「えー。そうですか?」
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