One more kiss
「そうそう。ホントアタシって、意外と小心者なんだから。ああいうのってやっぱ、向き不向きがあると思うのよね。様々なメディアで、美の伝道師として活躍している方は他に大勢いらっしゃるんだから、アタシなんかが出る幕なんてないわよ」


そう締めくくり、その話はそこで終わったのだった。


だからマコトさんは全国的に顔や名前が知れ渡っているという訳ではない。


だけど知る人ぞ知る、カリスマ的な人気があり、そしてそれに傲る事なく真摯に仕事に向き合って来た方で、いつしか同業者の間でも一目おかれる存在となったのであった。


約10年の修行を経て独立、この場所にお店を構えたのだけれど、その際に、かねてより熱烈オファーを受けていたモデル事務所と専属契約を結ぶ事となった。


それこそが私の所属する「CatWalk」だ。


そしてその数ヶ月後、私はマコトさんと運命の出会いを果たしたのである。


独り立ちしてからの彼の活躍は、もう言わずもがな。


だけど相変わらず「アタシはあくまでも裏方だから」と、テレビはもちろん美容に特化した雑誌以外の取材は頑なに断り続けているようだ。


経営者側になったこと、そしてモデル事務所と専属契約を結んだ事により、マコトさんが一般のお客さんを担当する機会は大幅に減ってしまった。
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