One more kiss
私自身、そういうハガキを受け取っている一人なのだから間違いない。


とにかくすべてのお客さんを大切にしている様子がヒシヒシと伝わって来る。


自分の希望する職に就き、周りの人に愛されて、その世界で頭角を現す事ができたマコトさんは本当にすごい人だと思うし、心から尊敬している。


片や私は……。


最近ちょっと、いや、かなり停滞気味の迷走気味。


実は私は昔からモデルに憧れていたという訳ではない。


大学に進学する直前の春休み、地元の群馬を出て都内で一人暮らしを開始するべく、母親と一緒に、前から目星を着けていたアパートの内見に訪れた。


無事不動産屋さんとの契約を終え、その帰りに立ち寄った駅ビル内にて、今の事務所の人にスカウトされたのだ。


母親から「新陳代謝が活発な時期に化粧なんかしちゃダメ!肌がボロボロになるよ!」と脅されていたので、周りに流される事なくスッピンを貫いていたし、真っ黒なおかっぱ頭を寝癖隠しに黒のゴムで一つにまとめるという髪型であった上に、服装も、グレーのパーカーと白Tシャツとジーンズという、田舎の垢抜けない女の子丸出しの格好であったというのに、よくぞ声をかける気になったものだ。


丁重にお断りしたのだけれど、食い下がられてうっかり教えてしまったメアド宛に、その後何度も連絡をいただいた。
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