恋より先に愛を知る



「ここ2週間、変わりはありましたか?」


【いいえ。特に】


「じゃあ、この間と全く同じ感じ?」


【そうですね】


「失礼ですが、例の彼は何か言っていたりしますか?」




先生は核心を突いてくるから嫌い。


どうせ親から既に聞いてて知ってるんでしょう?


私の口から“別れた”って言わせたいのよ。この男。


【いいえ。何も】


「・・・そうですか」






“戻る気はないから”



先生のせいだ。


思い出したくもないことを思い出してしまう。


彼の声が、
私の唯一苦手な彼の冷たい声が、


耳にこびりついて離れない。


唇を噛み締めて先生を睨みつけると、
先生は困ったように眼鏡をかけ直した。


「薬は飲めていますか?」


【はい】


「ではまた2週間分出しておきますね」


【ありがとうございました】



軽く頭を下げて部屋を出る。


お会計を済ませて外へと出ると、
今までの張り詰めた緊張感が一気に解けて


大きなため息をついた。



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