恋より先に愛を知る
人差し指をちょんちょん、と振ると、
カイトは我に返ったように瞬きを数回した。
「それ、親は知ってんの?」
【知るわけないでしょ。黙っていくんだから】
「・・・お前はそれでいいわけ?」
【別に、後で怒られようが関係ないわ。
とにかく私は行きたいのよ。強行突破しかないでしょ】
私が答えると、カイトは不満げに私を見て、
それからふっとため息をついた。
「何しに行くのか、大体見当はついてる。
お前、こいつに会いに行くんだろ?」
カイトが私の胸元にさげられたリングを掴んだ。
カイトの目を見ると、
少し怒ってるみたいに眉をひそめていた。
【会いにいくわけじゃない。
約束を守りに行くのよ】
「でも、行ったら会いたくなるもんだろ」
【そんなことない。見つからないように黙って行って、
約束を守れたらすぐ帰ってくるもん】
「無理だね」
【なんであんたにわかるのよ】
「お前の考え方が甘いからだろ」
どうしてこうなるの?
なんでこいつは私の目をまっすぐ見て、
そんなこと言うの?
会いたいわけじゃない。
私はただ、純粋に、
頑張ってるあの人を見たいだけ。
何一つ守ることのできなかった約束を、
最後に一つでも守りたかっただけ。
ただ、
声が聴きたくて、
聴きたくて・・・。