恋より先に愛を知る



海斗のお父さんは、
交通事故で亡くなったらしい。


お母さんは仕事が忙しく、
ほとんど家に帰ってくることはなくて、

ほぼじっちゃんが海斗を育てていたんだって。



だからかぁ。
じっちゃんにまるでそっくりな優しさが見えるのは。


じっちゃんの目は、
海斗の話をすると嬉しそうに生き生きと輝いていた。


「あいつも、あんたと同じだよ。
 若い者特有の悩みっていうのかね、苦しい恋をしてた」


【苦しい恋?】


いつか、海で言っていた気がする。




『してるよ。もう2度と、戻れない恋』




もう2度と、戻れない恋。


真剣な顔で話すじっちゃんをみていたら、
途端に気になった。


ねえ、海斗。


あなたはどんな恋をしているの?


「あの子はね、あんたとは正反対の立場なんだ」


じっちゃんの言葉に、私は息をのんだ。


それって、もしかして・・・。


「あの子の大事な子は、病気だった。
 だけどあの子には荷が重かったんだろ。
 

 そりゃあ、高校3年生には無理な話だ。
 そんな大事なこと、やすやすと抱えられる問題じゃない。


 だからあの子は、自分を守るために、
 自分のためにその子を突き放した」




海斗の背中を見つめる。


ハルさんとじゃれ合う海斗の背中からは、
そんな過去があるなんて微塵も感じられない。


そんな、大きな過去があるなんて、
思ってもみなかった。



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