恋より先に愛を知る
じっちゃんは寂しそうに続けて言った。
「その子は、死んだよ。寂しく、1人で。
親にも見放されていた女の子だった。
病院にいる時も、死ぬ時も、1人だった。
だからその子にとっては海斗の存在が
一番大きかったんだろうなあ。
海斗は自分が突き放したことを後悔した。
まさか死ぬなんて思ってもいなかったんだろう。
“海斗がいなければ自分は生きてはいけない”
女の子は海斗にそう言っていたらしいが、
海斗はそれを受け止めようとはしなかった」
きっと哀しかったんだ。
その子は、海斗に会えなくなってから、
どんな思いで生きていたんだろう。
突き放した海斗は、
どんな思いで今まで過ごしてきたんだろう。
もう2度と、戻れない恋―。
想像を絶する恋に、私は何も言えなかった。
女の子の気持ちもわかる。
だけど海斗の気持ちだって、わかるよ。
だって、支えらんないよ。
病気のせいで情緒不安定な人を支えるなんて、
並大抵のことじゃないもの。
私だってわかってる。
投げ出したくなる時だって、あるんだもの。
海斗のせいじゃないよ。
しかたがなかったんだよ。
だって海斗は、まだまだ子供だもん。
しょうがなかったんだよ、海斗。
「余計、あんたが気になるんだろう。
あんたが死んだらどうしようって思ってるんだろうな。
あんたの大事なやつが自分に重なって、やるせないんだろうな」
・・・だから、いつも私を気にかけていたの?
彼に、自分を重ねて。
私に、女の子を重ねて・・・。
その時初めて、海斗の優しさが身に染みた。
『そんなやつやめろよ。そんな男のために泣くなよ』
あれは、自分のことを言ったんだ。
俺なんかやめろよ。
俺のために傷ついて、
泣くことはやめろよ、って。
その子に、言いたかったんだね。
私はその日、とても大きな秘密を知った。