恋より先に愛を知る
「本当に一人で大丈夫なのか?」
少し日が傾いた頃、
お父さんが車を走らせながら私に訊ねた。
私がゆっくり頷くと、
お父さんはまた口を開いた。
「終わったらすぐに帰ってくるんだぞ。
すぐにメールをいれて、
なるべく人通りの多いところを歩いてきなさい」
また私が頷くと、
お父さんはそれから黙ってひたすら車を走らせた。
ああ、懐かしい。
私が、私がいた場所。
この道も通った。
ここはお父さんと一緒に通った道。
あそこのお店は1度だけ入ったことがある。
次から次へと流れる景色を視界に入れていくうち、
見覚えのある道に出た。
お父さん・・・だめだよ。
ここだけは、通ってほしくなかったんだよ。
きっと、思い出作りに。
お父さんはわざわざこの道を選んだんだ。
これじゃあ、泣かずにはいられない。
だってここは、彼と一緒に歩いた道。
何度だって、もう目をつぶってだって歩けた道。
学校から、彼の家へ繋ぐ道。
私の思いでの、大切な道。