恋より先に愛を知る
廊下の先で、
女の子が声をあげて歩きだした。
舞台公演の宣伝の女の子たちだ。
私はその声がするほうへと引き返して、
すでに長蛇の列になっている最後尾に並んだ。
私がここで一番会っちゃいけないのはもちろん彼だけど、
先生たちとも会ってはいけないの。
休学中の私がここにいてはちょっとまずいのよね。
さっそく先生たちの団体が目に留まって、
私は俯いてじっとしていた。
なんだかかくれんぼみたいで、
少し楽しくなってきた。
そうだ。
もしここでバレずにやり過ごせたら、
帰りに大好きなグレープフルーツのジュースを買って帰ろう。
そう考えるとゲームみたい。
いっぱいいるけど、大丈夫かな?
見つからずにいれるかな?
先生が私の横を通り過ぎていくたびに
はらはらドキドキする。
そうして通り過ぎてはくすくす笑い出す。
緊張が解けてリラックスしてきた頃、
私は一瞬にして動けなくなった。
(・・・ゲームオーバー。私の負け)
だって、エレベーターから出てきたのは、
私の一番会ってはいけない人だったから。