恋より先に愛を知る
「なに?」
掌にそっと、文字を書いていく。
【教えない】
「なんでだよ。教えろよ!」
私は笑って、
それからノートを取ってペンを走らせた。
【今日は約束、守りに来た。】
「約束?」
【何一つ守れなかったから、
最後に一つだけ約束を守りに来たの】
「そんなのいいのに。
・・・でもありがとう。それ貸して?」
和輝が笑ってそう言うと、
ノートを私から受け取って何かを書き始めた。
【ありがとう。じゃあまた新しい約束をするよ。
元気になってまたここに戻ってくる。
そして俺の伴奏をすること。俺の舞台を見に来ること。】
なんで、そんな約束をさせるのよ・・・。
最後って、言ったじゃない。
どうしてそんなに当たり前のようにそんな約束をさせるのよ。
私はあなたの何なの?
これからどうやってあなたと関わっていくの?
なんでもないように、当たり前のように言うんだから。
私のこの辛い気持ちなんてわからない。
この人はそういう人なのね。
そんな彼が、好き。
馬鹿みたいで、自分勝手な彼が好き。
気まぐれな彼に、振り回されるのが私は好き。