恋より先に愛を知る
嬉しいのに、すぐに気持ちが落ちていく。
「それだけ。電話ごめんね」
〈いや、全然大丈夫〉
「じゃあ・・・ばいばい」
〈はいよー〉
切れた電話の先をじっと見つめる。
私、電話しないほうが良かったかも・・。
そんな後悔を胸にしまうと、
ちょこんとLINEが入った。
―俺が出来るのはお前のメンタルとか
ケアすることだけだけど、
良くなってるのみると安心するよ―
何を考えて、
何を思ってこんな文字を打っているのかがわからない。
あの日の彼と打って変わって冷めた態度の彼は、
どういうつもりで私の電話に出たの?
その言葉は嬉しいのか、
それともこれ以上踏み込めないように
伏線を張られただけなのか。
余計に悪いことを考えてしまう自分が嫌いだ。
私は何気なく、あの歌を歌い出した。
これを歌ったら、落ち着くような気がしたから。
「・・・声、治ったん?」
ふと声がして、私は歌うのをやめて声の主を見た。
「海斗・・・」
「すげえ、初めて
名前呼ばれるとなんか変な感じすんな」
スウェット姿の海斗が階段下に立っていて、
ゆっくりと私のそばまで上がってきた。
「さっきね、声が出るようになったの」
「そっか、良かったな!すげえ、すげえ!
なんか声出るの新鮮だな!
つうかお前歌うまいのな!?」
呆れるぐらいのハイテンション。
彼とは、大違い・・・。
「そういえばお前さ、東京、どうだったん?」
「・・・楽しかったよ?」
「ふうん、なら良かったな。
後悔もしてねえみたいだし。一件落着?」
「うん・・・。ていうか、
なんでアンタなの?じっちゃんが良かった」
「はあ?じいちゃんのとこに寄った帰りだよ。
あーあーすいませんね、俺で」
海斗は私の横に乱暴に座ると、私を見てにやっと笑った。