恋より先に愛を知る
「ばーか。冗談だよ、冗談。
その感じじゃお前、言われ慣れてねえのか?
本気にすんなって」
なにこれ。なんだこれ。
私、からかわれただけ・・・?
そう思うと途端に腹が立ってきて、
私は海斗のおでこを打った。
「あの、ぜんっぜん痛くないんですけど」
「むかつく!あのねえ!
ふざけてそんな大事な言葉使ってると、
いつか好きな人に本気で言うときに
伝わらなくなっちゃうんだからね」
「ふーん。本気で言うとき、ね」
海斗は立ちあがって私を見おろした。
「わりと本気だったりもしたんだけどな」
「えっ・・・」
「ほら、もう遅いから帰ろうぜ。
俺明日1限からテストなんだよな~」
海斗がそう言って階段を
1段ずつ飛ばして降りていく。
1人取り残された私は、
その背中をじっと見つめた。
じっちゃんの教えてくれた過去が、
私の頭の中で鮮明に思い出されていく。
2度と、戻ることのない恋をする同志。
さっきの言葉は、どんな意味ですか?
ただ単純に、笑った顔が好きだよってこと?
それとも私をからかうため?
それとも・・・あなたは本当に・・・。