恋より先に愛を知る
☆
薬は毎日飲んでる。
通院だってしてるし、
勉強も家事も全部、充実させてるはずなのに。
私の身体には異変が起き始めていた。
あの日の事件を思い出す。
夢には必ず、
あの時の情景が浮かびあがって出てくる。
あの男の人が、私を追いかける。
びたっと隣にくっついて、
私の身体をべたべた触るの。
『黙ってたら何もしないから』
そんな言葉は嘘。
『やめてって、怖いって言えばやめるのに』
そんな言葉も嘘。
ずっとずっと、私から離れない。
逃げるように地元に帰ってきたはずなのに、
こんなところまで追いかけてくる。
私の後ろを、ずっと離れてくれない。
何をするのにも、後ろからついてくる。
私を叩くのよ。
助けてって言うと、
口を塞いで、それから叩くのよ。
やめて、叩かないで。
何もしないって言ったじゃない。
話に付き合ってくれれば、
すぐに帰してくれるって言ったじゃない。
怖いって言えば、
やめてくれるって言ったじゃない。
「助けて・・・っ!!」
その日の夜も、自分の叫び声で目が覚めた。
時計を見ると、0時を回った頃だった。
全身の震えが止まらなくて、
吐き気とめまいが私を襲う。
嫌な汗でびっしょりになって、
胸の動悸が止まらない。
そんな時、
私が助けを求めたのは・・・彼だった。