恋より先に愛を知る






薬は毎日飲んでる。


通院だってしてるし、
勉強も家事も全部、充実させてるはずなのに。



私の身体には異変が起き始めていた。






あの日の事件を思い出す。


夢には必ず、
あの時の情景が浮かびあがって出てくる。



あの男の人が、私を追いかける。




びたっと隣にくっついて、
私の身体をべたべた触るの。




『黙ってたら何もしないから』




そんな言葉は嘘。




『やめてって、怖いって言えばやめるのに』




そんな言葉も嘘。




ずっとずっと、私から離れない。




逃げるように地元に帰ってきたはずなのに、
こんなところまで追いかけてくる。



私の後ろを、ずっと離れてくれない。



何をするのにも、後ろからついてくる。




私を叩くのよ。



助けてって言うと、
口を塞いで、それから叩くのよ。






やめて、叩かないで。




何もしないって言ったじゃない。






話に付き合ってくれれば、
すぐに帰してくれるって言ったじゃない。





怖いって言えば、
やめてくれるって言ったじゃない。













「助けて・・・っ!!」









その日の夜も、自分の叫び声で目が覚めた。




時計を見ると、0時を回った頃だった。



全身の震えが止まらなくて、
吐き気とめまいが私を襲う。



嫌な汗でびっしょりになって、
胸の動悸が止まらない。



そんな時、
私が助けを求めたのは・・・彼だった。




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