恋より先に愛を知る



私は気持ちを落ち着かせてから、海斗を見た。


「死なないよ、私は。大丈夫」


「そっか。俺は後悔だらけだからさ、
 お前にはそうなってほしくなくて。


 だから言ったろ?“後悔すんな”って」


「うん」


私が頷くと、海斗は言いにくそうに
私をちらちら見ては目を逸らして髪をかきあげた。


「あのさ、この間の・・・」


「なに?」


「この間の冗談・・・」






“好きだ”






思い出した瞬間、思わず頬が熱くなる。



恥ずかしさと、戸惑いとで
ごちゃ混ぜになる感覚が、一気に襲ってきた。



「何よ」


「あれ、冗談なんかじゃねえから」


「・・・へ?」



固まる私を余所に、海斗は照れ臭そうに
髪をかきあげると、私をじっと見た。




「好きだよ」


「な・・に言ってんの?
 今葵ちゃんの話したばっかじゃん」



「だから今言うんだろ。
 その葵より好きだっつってんだよ」


「な、なんで・・急すぎるよ。
 何それ。冗談って言ったじゃない!」



「だから、冗談なんかじゃねえって、
 さっき訂正したろ!?」



「・・・そんなこと言われても、
 私はそれに応えられない」



「それって、そいつのせい?」



海斗がリングを見つめて呟いた。







「・・・私が好きなのは、いつだって和輝よ」







「お前のこと、好きじゃないのに?」







ズキ・・・って、また胸が痛んだ。




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