恋より先に愛を知る
「なにそれ・・・」
私が呟くと、じっちゃんは海斗をどかして私の隣に座った。
「ずっと気になってはいたんだ。あんたの話は、
どうも苦しくて、聞いてるこっちが胸がつまるようだった。
そうか、さっきの話を聞いて納得したよ。
それは“愛”だ」
「愛・・・?」
「じいちゃん、何言ってんだよ。
そんな恥ずかしいこと言ってんなよ」
「何が恥ずかしいか。大事なことだ。
この歳で、そんな感情を抱くこと自体、
珍しいものなんだよ。何も恥ずかしいことなんかないよ」
「それならじっちゃん・・・“愛”って何?」
よく、愛してるって言うじゃない。
好き合うもの同士が、その気持ちが
本物かどうかを確かめるために、
“愛してる”をおまじないのように唱えるの。
離れて行かないで、のサイン。
大好きだよ、のサイン。
みんなそんな言葉、簡単に言うじゃない。
特別な、じっちゃんの言う“愛”ってなに?
じっちゃんはハルさんの頭を撫でて口を開いた。
「あんたぁ、自分の気持ちを抑えてないかい?」
「え?」
「そいつは無意識だ。あんたの心がそうさせてる。
何故かって?相手を最優先させるからだろうな」
「相手を、最優先・・・?」
「あんた、その男と喧嘩をしたことはないか?
怒られはしなかったか?
“何で本当の気持ちは言ってくれないんだ”って。
“素直な気持ちを出せ”って」