鈍感ちゃんと意地悪くんの短編集
「メイド喫茶……?
するの……?
楽しそう! 
あたし、あの黒いふんわりワンピースに白いフリフリのエプロン、着てみたかったの!」

黒板の、「文化祭の話し合い」と書かれた文字と瀬田のセリフで、やっと現状を理解した立花は、嬉しそうに瀬田に笑ってみせた。
ほら、あんなフリフリのスカートやエプロンなんて普段着る機会ないし、楽しそうだよね、着てみたかったんだぁ。と、わくわくと立花は声を弾ませている。
瀬田と手をつないだまま。
おーい、ホームルーム中なんですけど~。
瀬田はともかくとして、立花、無自覚ですかぁ?

「えっ……。
美空、それはちょっと……」

瀬田が慌てている。
それはそうだ。
瀬田はメイド服を立花に着せたくはないのだ。
独り占めしたいのに、立花自らが着たいと言い出した。
居眠りしていた立花は瀬田の気持ちを知らない。

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