鈍感ちゃんと意地悪くんの短編集
「あ、美空!」

あ~、なるほど納得。
学校一の美少女の突然の訪問に、柔道部男子もメロメロのドキドキだったのか。

わたしは席を立ち、美空の待つ入口へと向かった。

「珍しいわね、美空がわたしに会いに来るなんて。
どうしたの? 瀬田君と喧嘩でもした?」

時々わたしが美空のクラスに遊びに行くことはあっても、美空が来ることはなかなかない。
しかも、毎日毎日べったりと美空にくっついて離れない瀬田君の姿が見当たらない。
ふふ、もしやこれはなにか、あったのかしら?

「瀬田がクラスの男子とお喋りしている隙に、そぉっと来ちゃった!
実はありさにお願いがあって……!」

ほぅ、隙をみてそぉっと……ねぇ。
隙を見ないと親友のクラスにも遊びに来れないほど溺愛されてのね、この子……。
わたしは美空を離したがらない瀬田君を思い浮かべてうんざりした。
親友が大事に大事に愛されているのは喜ばしいことだけどけど、それにしたって溺愛が過ぎる愛ったら、うざったいほどなのよね。
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