鈍感ちゃんと意地悪くんの短編集
高橋は一瞬きょとんとして、それからああ、と何かを思い出したように、廊下の隅を指さした。

「さっき先輩に呼び出されてた。
あ、ほらあそこ」

高橋の言葉に、指の先を目で追うと、一つ上の先輩に手を握られてぼぅっとしている美空。
不思議そうな表情を浮かべて、小首をかしげている。

本人は分かっていないようだけど、どうみたって告白。

「あの野郎、俺の美空に触りやがって」

「俺のって……」

高橋が苦笑いを浮かべた。
いや、俺のだし。
いずれは。

俺は、つかつかとそこへ向かった。
美空の手を握る先輩の両手を振り払う。
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