鈍感ちゃんと意地悪くんの短編集
「さっき出てたバスケの試合が長引いてさ。
間に合わなかったらどうしようかと焦ったわ。
去年のことがあるし」

美空を助けるのは俺の役目だからな。
聴いてるこっちが恥ずかしくなるようなセリフを吐きながら汗を拭う瀬田君は、いつもの涼しい顔ではなかった。
かなり急いできたんだな、とその様子から伺える。

スタートの合図がかかり、借り物競争は始まった。
足が遅くてしかも出遅れた美空は、借り物の書かれた紙を一番最後に手に取った。
それからきょろきょろと見渡すと、こちらへ駆けてきた。

あの子転びそう。危なっかしいわね……。
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