鈍感ちゃんと意地悪くんの短編集
「瀬田、瀬田! 来て!
借り物競争なの!」

「ん? 美空?
借り物って俺? なんなの、借り物の内容」

瀬田君の考えていることが手に取るようにわかる……。
懸命な美空に対し、彼はにやにやしている。
きっと、好きな人、とか恋人、とか書かれてる、と喜んでいるんだ。

「いいから早く!」

「はいはい。早くゴールしたいんだな?
任せとけって」

「って、きゃぁっ! ちょっと瀬田!」

瀬田君はにやにやしながら美空を一瞬で横抱きして、そのままゴールに向かって走り出した。

「……どっちが借り物か分からないわね……」
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