鈍感ちゃんと意地悪くんの短編集
瀬田君のやりすぎ行動に、周囲の女子から黄色い歓声が上がる。
観客も先生方も、とにかくみんな、二人に釘付けだ。

「また目立つことして。
瀬田君、後で美空に怒られても知らないわよ?」

わたしはやれやれ、とため息をついた。

「えと、立花さんの借り物は……。
あはは、なるほど、借り物的にはオッケーだけど……。
走者が自分で走ってゴールしないとね。
残念だけど、失格だよ?」

「あぁ……。今年も……」

がっくりと肩を落とす美空と、そんなこと気にもとめない瀬田君。
観覧席は大いに沸いたけど、美空としてはまたまた瀬田君に無理に目立たされ、恥ずかしい目に遭い、そして二年連続の失格になったわけだ。
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