鈍感ちゃんと意地悪くんの短編集
「もう一回言うぞ?
俺以外の男に触られるなよ?
もし触られたら、キスするぞ」

「……え?」

顔をますます近づけると、美空は真っ赤になった。
やっと近さに気づいたか。
でもって、やっと俺を意識したか?

「ちょ、瀬田……?
な、なん……」

本当にキスまで数センチ。
ああ、このままいっそのこと……。

「なんてな。
さ、帰ろうか」

本当にキスしたかったけど。
どうにか俺は理性をかき集めて、その欲望を抑え込んだ。
さすがにファーストキスを廊下で突然奪うつもりはない。

美空を囲んでいた腕を解いてやる。
けど、びっくりしすぎたのか、美空はその場から真っ赤な顔で動かなかった。
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