鈍感ちゃんと意地悪くんの短編集
「ほら美空、行くぞ?」

俺は動かない美空の手を取って、教室へカバンを取りに向かう。
教室の前で、高橋に声をかけられた。
さっきとは逆だ。

「俺、壁ドンって漫画とかドラマで見たことあるけど、直接見たの、初めて。
なぁ、どんな感じ?」

視線はキラキラと、口元はにやにやと、高橋は興味津々だ。

「壁ドン? 壁? ああ、さっき美空を囲ったやつか。
うん、煽られる。凄く良い」

あれ、壁ドンって言うのか。
小さく呟くと、

「知らずにやってたのかよ」

高橋は一瞬目を見開いて、驚いたような表情を浮かべた。

「瀬田って天然の女タラシだな」

「なわけあるか」





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