鈍感ちゃんと意地悪くんの短編集
教室に入って席に向かう。
帰り支度をするために、繋いだ手を離した。

支度を終えて隣の席を見る。
美空は俺が用を済ませていた間に帰り支度を済ませていたのか、机に置いた鞄の上に頬杖をついて、俺を見ていた。

「お待たせ、どうした?」

「どうもしないよ?
ただ、ちょっと……」

「ちょっと……?」

「なんで瀬田、さっきあんなこと言ったのかなって考えてたの」

……。
さっきって、たぶん壁ドン? のときのことだよな?
「俺以外の男に触られたら、キスする」
ってやつだよな?
いや、触られなくても普通にしたいけど。

……やっぱりこいつ、まだ何も気づきはしない。

「鈍感天然。ほら行くぞ」

「もうっ」

鈍感な彼女とのいつもの会話。
俺、いつまで我慢できるんだろ……。
お願いだから、早く気づいて、美空。

俺、そろそろ限界だ。
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