鈍感ちゃんと意地悪くんの短編集

あれ? 夏風邪?(立花美空)

「美空?」

「ん……?」

5時限目の世界史の時間。
いつも以上にわかんないなぁ、と黒板を眺めながら、先生の話を聞いていた。

そこに、聞きなれた声が小さく掛けられる。
あたしは黒板から左隣に、視線をゆっくり移した。

隣の瀬田が、心配そうにあたしの顔を覗き込んでいる。

瀬田は普段、あたしを立花、って呼んでるんだけど、時々美空って名前で呼んだりする。
まぁ、中学から仲良い友達だし、いいんだけどね。

男子で、時々でもあたしを呼び捨てにするのは、瀬田だけ。
最初はびっくりしたけど、最近は少しだけ、慣れてきた。
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