鈍感ちゃんと意地悪くんの短編集
「立花、入学早々ボケかますな。
鈍いんだから、無駄に走るんじゃないよ?
俺はお前が心配で仕方ない」

兄か父親か親戚のおじさんか。
そんな口調で美空を咎める瀬田君。

でも口調とは裏腹に、その瞳は、責めたり怒ったりしていない。
むしろ大好きって語っているようで、美空への視線はどこまでも優しい。
ま、鈍感美空は気づかないけどね。

「あ、うん。ごめんね?
でね、瀬田……」

そろそろ、離してくれないかな?
抱きしめられていることに気づいたらしい美空が、赤い顔で小さく呟いた。

入学式の当日。
学校前の大通り。
シンボルとも言える大きな桜の木の下で。
小柄な美少女と、その美少女を抱きしめるイケメン。

……大いに目立っている。
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