鈍感ちゃんと意地悪くんの短編集
「苦い」

あたし、ブラックコーヒー飲めないんだけどなぁ。
しかも喉、乾いてないんだけどなぁ……。

苦さに顔をしかめていると、ますますギュッと抱きしめられた。

「俺のだからな」

それはそうだ、瀬田のコーヒーだもんね。
いつもブラックだし、苦いに決まってる。

「瀬田、離して?
まだ購買行ってないの。
パン、売り切れちゃう」

「お前は本当にわかってないな……。
ま、いいか。じゃ、一緒に行こう」

瀬田は、抱きしめるのをやめて、今度はあたしの手をとった。
隣のクラスの男子は、いなくなっていた。
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