鈍感ちゃんと意地悪くんの短編集
チョコを返す。
は、正解じゃなかったのだろうか?
素直に、でも美空に見つからないように持って帰ればよかったのか?
家族が喜ぶし……。

どうしてそうなるんだ?
いやだから。なんかそれも違う気がする。
俺がまず嫌だし。
苦々しい気持ちを抱えながら、俺はあと3個返さないと、と一人悩んでいた。

「瀬田、あのさ……」

「ん?」

4時限目の授業前、自分の席で頭をかかえていると、高橋がやってきた。
なぜかこっそり耳打ちスタイルで話しかけてくる。

「俺さ、さっき伝言頼まれちゃって。
昼休み、桜の木の下で待ってますって」

きっと、チョコ渡して告白だよな。
高橋は隣の美空を気遣いながらそう言って、苦笑いを浮かべて去っていった。

……。
今日は休むべきだったか?
待ってると言われたからには行かないわけにもいかないけれども、まだ返すべきチョコもあるし……。
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