鈍感ちゃんと意地悪くんの短編集
「忘れた……の……」

はぁ?

「忘れた?」

「う、うん。
みんなにあげようと思って作ったチョコ、おうちに忘れて学校来ちゃって……。
誰にもあげてないの……。
友チョコ交換したかったのに、貰うだけ貰っちゃって、申し訳ないなぁ」

ホワイトデーにお返ししようか、明日、あげようか……。
美空はブツブツと呟いていた。

「お。俺にはあるのか?」

俺は、うっかり聞いてしまった。
これじゃあ催促しているみたいで格好悪いじゃないか……!

ハッとして急に恥ずかしくなって、そっぽ向いた俺を、美空が見上げる。

「え? 勿論あるよ?」

勿論……!
勿論!!
ああ、どうしよう、その言葉だけで俺、天に昇れそう……。

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