鈍感ちゃんと意地悪くんの短編集
「ありさや副委員長やみんなにもあげるのに、いつも一緒の瀬田にあげないわけにいかないじゃない?
ちゃんと、用意してあったんだけどな?
ごめんね? 忘れてきちゃって」

……。
それって、俺にも友チョコってこと?
今のお前の発言で、俺、昇りかけてた天からあっさり戻ってきちゃったっての。

いや、ここでめげてはいけない。
相手はこの鈍感マイペース娘美空だ。
俺とは付き合ってるわけだし、それなりに特別なはずだ、うん。

「じゃ、今日のデートはお前の家な。
ほら行くぞ」

俺は美空の手を取って歩き出した。

「そんなにチョコ食べたかったの?
ごめんね、忘れちゃって」

手を引かれながらきょとんとそんなことを言う彼女に、
違う、ともそうだ、とも言えずに俺は苦笑いを浮かべた。

「美空は本当、天然おとぼけ娘だな……」

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