鈍感ちゃんと意地悪くんの短編集
「はーい。今戻りまーす」

先生の声に、瀬田はあっさり立ち上がった。

痛そうな態度も表情も、さっぱりなくなっている。
ほら、やっぱり痛くなんてないんじゃないの!
なんなのもうっ! またあたし、意地悪されたの?!

「バカは瀬田よ、バカ!」

あたしは瀬田を置いて教室に向かって走り出した。

後ろから、瀬田がくすくす楽しそうに笑いながら、のんびり付いてくる声が聞こえた。
鈍いんだから走るな、転ぶぞ~、とか。
バカはお前だぞ~とか言ってる。

ああ、やっぱり瀬田は意地悪だ。
でも、困ったときにはいつも隣にいてくれて、助けてくれて、なんだかんだ優しいんだよね……。

意地悪だけど優しいあたしの彼氏は、今日も相変わらずだ。
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