君色のソナチネ




「うーんとね、これは私の考えなんだけど、恋する事って、音楽家が自分のやってるピアノだとか、ヴァイオリンだとかを大切に思う気持ちと似てるとこがあると思うんだよね。」


「…うん?」


「例えば、私が付き合ってる人に、
''ヴァイオリンと俺、どっちが大切なの?''
って言われたとするよ?」


「えっ、ちょっとそれ、愚問じゃない?」


「そうなのよ。音楽やってる人は、バカバカしい質問だって思うよね?

だって、純怜にとってピアノがそうであるように、私にとってヴァイオリンは、他の何とも比べようのない、唯一無二の存在だから。」


「うん、確かに。」


「 私は人生のほとんどをヴァイオリンと共に生きてるの。かけがえのない存在よ。

それに、バイオリンだけじゃなくって、クラシック音楽は何百年の歴史と、数え切れないほどの人の魂とが詰まったもの。聖なる存在だし。

比べるなんて、失礼だわ。

だから、そういう意味でも、わたしにとって、ヴァイオリンはヴァイオリンでしかないのよね。もう、身体の一部って言っても全然大袈裟じゃないの。」


「うん。」


でも、それって、恋と関係あるの?







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